素朴な問いが哲学の王道に通じる 小さい子どものための哲学対話

問いを立て、他者との語りを通じて探究を深める哲学対話。今回から具体的な実施法に触れていく。幼児〜小学校低学年程度の子どもと行う哲学対話でも、「子どもだから」という先入観は不要だ。愛や家族のあり方など、普遍的なテーマが語られることも多い。

これから数回にわたって、さまざまな場所と機会に応じて、どのように哲学対話を行えばよいのかを、実例と経験をもとにしてご紹介していきます。まずは、保育園や幼稚園に通うお子さんや小学校低学年のお子さんを対象とした「子どもの哲学」のやり方をご案内します。

幼児を侮るなかれ

河野 哲也

河野 哲也

立教大学文学部・教授、博士(哲学)慶応義塾大学
日本学術会議連携会員、日本哲学会など多くの学会の理事や委員を務める。専門は、現代哲学と倫理学。近年は環境の問題を扱った哲学を展開している。また、教育の問題にも関心を持ち、対話によって思考とコミュニケーション力を養う教育を、幼稚園・保育園児から高校生を対象として、多くの学校や図書館などで実践している。

子どもと哲学対話を行なっていると誰もが実感することなのですが、かなり小さなお子さんであっても、驚くほど物事をよく観察していたり、順序だって考えたりできるものなのです。パリの幼稚園での実践を記録した『小さな哲学者たち』(ジャン=ピエール・ポッツィ、ピエール・バルジエ監督)というドキュメンタリ映画をご覧になってください。愛や賢さ、家族のあり方などについて、びっくりするほど鋭い洞察にあふれた意見が交換されます。子どもは浅はかな考えしか持っていないという思い込みは捨てた方がいいでしょう。自分は子どもの頃、こんな哲学的なことについて考えたこともなかったと思っている皆さんは、おそらく自分の子ども時代のことを忘れているのです。従来の子どもの発達理論は、…

(※全文:304文字 画像:あり)

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