風通しのよい組織風土をつくる 企業における哲学対話の実践

官公庁や企業でも取り入れられ始めている「哲学対話」。SDGsに代表されるように、環境問題やダイバーシティなどが重視されるようになった今こそ、根本的な問いに皆で向き合うことが求められているといえる。

道徳教育とビジネス倫理

河野 哲也

河野 哲也

立教大学文学部・教授、博士(哲学)慶応義塾大学
日本学術会議連携会員、日本哲学会など多くの学会の理事や委員を務める。専門は、現代哲学と倫理学。近年は環境の問題を扱った哲学を展開している。また、教育の問題にも関心を持ち、対話によって思考とコミュニケーション力を養う教育を、幼稚園・保育園児から高校生を対象として、多くの学校や図書館などで実践している。

今年の8月8日から11日にかけて、立教大学池袋キャンパスにて、子どもの哲学国際学会が開催されました。この学会は子どもの哲学では世界最大の組織で、オンラインと対面を併用する形で実施したところ、約40カ国、のべ450名を超える参加者が集いました。盛会であり、日本での哲学対話の活動の広がりを示すことができたと思います。私も、一番関心を持っている小中学校での道徳教育をテーマとしたシンポジウムを企画いたしました。

しかしながら、私が対話の大きな可能性に気づいて、哲学対話を教育に導入しようと考えたのは、子どもへの教育においてではなく、企業や官公庁でのビジネス倫理の活動においてです。もう20年以上前になりますが、ある官庁から私たちの研究グループに、職員のコンプライアンスをどう向上させればよいかという相談がありました。それは、…

(※全文:304文字 画像:あり)

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