「談義」や「哲学カフェ」を活用した地域創生のための哲学対話

個人の考えや感じたことを語り合い、対話を通じて相互の理解を深めたり、新たな方向性を見出す哲学対話は、地域づくりにも生かされる。世代や立場、職業などが異なる人々が合意形成を図るために、「談義」や「哲学カフェ」を通じた対話が行われている。

地方の問題と魅力

河野 哲也

河野 哲也

立教大学文学部・教授、博士(哲学)慶応義塾大学
日本学術会議連携会員、日本哲学会など多くの学会の理事や委員を務める。専門は、現代哲学と倫理学。近年は環境の問題を扱った哲学を展開している。また、教育の問題にも関心を持ち、対話によって思考とコミュニケーション力を養う教育を、幼稚園・保育園児から高校生を対象として、多くの学校や図書館などで実践している。

地域創生は、日本を含めた多くの国々に共通の課題です。近代社会は、中央政府に権力や財力を集中させてきました。この長年の集権的な政治体制により、地方は産業を失い、雇用が縮小し、都市との経済や教育の格差が広がり、過疎化や高齢化などの課題が深刻化しています。この構造は、先進国と途上国の間にも見られます。地方が抱える問題は、近代社会のあり方そのものの問題です。

ただしその一方で、都市型の消費生活に飽きたらずに、豊かな自然や地域社会への参加に魅力を感じる人々も増えています。持続可能な社会への移行、ライフワークバランスの見直し、テレワークの普及などの情報テクノロジーの発達を背景として、地方への移住を試みる層が、子育て世代にも広がりつつあります。地方は、新しい価値観のもとで、これまでの都市化や近代化とは異なった発展をする可能性を秘めています。実際に、…

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