『そもそも』から考える 哲学対話の実践で育まれるもの

哲学というとひとりじっくりと思索にふける印象がある。しかし、哲学には他者との対話を通じて他者の思考を理解し、自身の思考を深めるという営みもある。近年教育現場でも注目される「哲学対話」を実践する河野哲也氏が解説する。

「哲学対話」という言葉が、この数年、いろいろな場面で、とりわけ教育の分野でずいぶん目にするようになりました。私は、十数年間、さまざまな場所と機会で哲学対話の実践に関わってきました。この連載では、実践から得られた経験や、他の実践家との交流で得られた知識をみなさまにお知らせして、ご一緒にこの活動について考えていこうと思います。

“そもそも”まで立ち戻って
考える

河野 哲也

河野 哲也

立教大学文学部・教授、博士(哲学)
慶応義塾大学 日本学術会議連携会員、日本哲学会など多くの学会の理事や委員を務める。専門は、現代哲学と倫理学。近年は環境の問題を扱った哲学を展開している。また、教育の問題にも関心を持ち、対話によって思考とコミュニケーション力を養う教育を、幼稚園・保育園児から高校生を対象として、多くの学校や図書館などで実践している。

「哲学対話」とは、哲学的に対話し、それにより参加者が相互に学びを得る実践のことです。「哲学的に」とは、過去の哲学者の学説を知識として知っているということではありません。哲学の本質は、何かを知っていることでは決してありません。それは、一つの問いについて深く考える態度のことです。「哲学」とは、「深く考える」という動詞を名詞化したものなのです。ですから、哲学対話では、参加者には哲学の知識は求めませんし、実際に、小学生を対象とした対話も実施できるのです。

(※全文:2423文字 画像:あり)

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