阿部文科相9月9日会見要旨 調整授業時数制度で新たな仕組み創設へ 10月までに周知
阿部俊子文部科学大臣は9日の閣議後記者会見で、次期学習指導要領で導入が検討されている「調整授業時数制度」について、全国での事例創出を加速させるため、10月までに新たな仕組みを周知する考えを明らかにした。
ユネスコ世界ジオパーク認定勧告
冒頭、阿部大臣は、5日から6日にかけてチリで開催された第10回ユネスコ世界ジオパーク・カウンシルにおいて、山口県の「Mine 秋吉台」の認定勧告が出されたことを報告。令和8年春のユネスコ執行委員会での承認を経て正式に認定される見込みだ。また、糸魚川、島原半島、隠岐、伊豆半島の4地域の再認定が決定した。なお、ユネスコ世界ジオパークは原則4年毎に再認定審査が行われる。
調整授業時数制度の全国展開
5日の中教審教育課程企画特別部会で「調整授業時数制度」の創設が提言され、今年度は研究開発学校9都道府県46校で柔軟な教育課程を編成・実施しており、来年度から全都道府県・政令市で事例創出の加速を図るべきとされたことについて、阿部大臣は「制度導入後、各学校が創意工夫ある教育課程の編成に具体的なイメージを持って速やかに取り組むことができるよう、全国の教育委員会・学校による知見や事例の蓄積が不可欠」と強調した。
文科省では、制度導入に先立ち来年度から、研究開発学校の取組などを参考としながら、全ての都道府県・指定都市の一定数の学校で教育課程の柔軟化を試行できる新たな仕組みの創設を検討しており、10月までに周知する予定だという。
阿部大臣は「こうした取組を迅速に進めながら、全国各地で調整授業時数制度の導入に向けた準備を加速することを通じ、制度導入時には、多様な個性や特性、背景を有する子供たちを包摂していく柔軟な教育課程編成に、円滑に取り組める環境をしっかりと整備していきたい」と述べた。
教員負担軽減と「余白」の創出
柔軟な教育課程編成を可能にする一方で、年間の総授業時数自体は維持される枠組みのため、学校現場から負担増への不安の声が上がっていることについて、阿部大臣は「学習指導要領について各教科等の本質的理解の獲得に重点を置いた内容の構造化と必要に応じた精選を行う」と説明。教科書の内容・分量についても、この方向性を踏まえつつ精選していくことを示した。
また、今般の論点整理素案では「実現可能性の確保」を基本的な考え方として掲げており、「教育課程の実施に伴い、教師に過度な負担、また負担感が生じにくい在り方を追求し、教師と子供の双方に『余白』を創出することでしっかりと豊かな学びにつなげられるよう、引き続き丁寧な検討を進めてまいりたい」と強調した。
高校無償化の検討状況
いわゆる高校無償化について、阿部大臣は「令和8年度予算編成過程において成案を得て実現するものとされており、鋭意、3党の実務担当者による協議が行われている」と説明。中学3年生の進路選択の時期が近づく中、「来年度、高校等へ進学する生徒が安心して進路選択ができるよう検討を進めていただくことが重要」との認識を示し、文科省として3党の協議結果を踏まえて速やかに対応できるよう準備を進めていくとした。
教師の働き方改革
8日に全日本教職員組合が会見で、教員の残業や業務の持ち帰り、土日の仕事について訴えたことに関連し、阿部大臣は、本年6月に成立した改正給特法により全教育委員会に教師の業務量管理や健康確保のための計画策定を求めていることを説明。文科省としても、いわゆる「3分類」の徹底、業務の適正化、教職員定数の改善、支援スタッフの充実に取り組むとした。
学校の働き方改革事例集(文科省の公式ホームページより)
業務の持ち帰りについては「文部科学大臣が定める『指針』においても、本来行わないことが原則である旨を示しており、引き続きその趣旨を徹底してまいりたい」と述べ、各教育委員会・学校における業務の精選と適正化に向けた取組を支援し、学校における働き方改革を推進していく考えを示した。