「読書離れ」に海外からヒント 文化庁が文字・活字文化振興に共同研究事業公募
スマートフォンの普及やライフスタイルの多様化を背景に、国内で「読書離れ」「活字離れ」が指摘されて久しい。こうした中、文化庁は諸外国における文字・活字文化の振興策を調査する共同研究事業の公募を開始した。海外の成功事例から日本の読書推進政策に活かせる知見を得るのが狙いで、大学や研究機関との連携を通じて、具体的な政策提言に繋げたい考えだ。 今回公募が開始されたのは、令和7年度の共同研究事業「文字・活字文化振興にかかる諸外国事情調査」。契約期間は令和8年2月27日までで、総合評価落札方式により、研究計画の質や実行性を重視して委託先が選定される。入札説明会は8月21日にオンラインで開かれ、提案書の提出期限は9月5日となっている。
背景にある「文字・活字文化振興法」と現代的課題
この調査事業の根底には、2005年に施行された「文字・活字文化振興法」がある。同法は、文字・活字文化が我が国の社会の発展の基礎をなすものと位置づけ、国や自治体にその振興に関する施策を求めている。 しかし、法施行から約20年が経過し、社会環境は激変。デジタル化の波は出版業界の構造を大きく変え、子どもから大人まで、可処分時間の多くを動画視聴やSNSが占めるようになった。このような状況下で、従来の読書推進活動だけでは限界があるとの認識が広がっており、より現代のライフスタイルに即した新たなアプローチが模索されている。
海外の知見収集と国内の地域連携支援
この国際調査は文化庁が継続的に実施している取り組みであり、諸外国の文字・活字文化振興策から得られる知見を国内政策に活かすことを目的としている。大学や研究機関との共同研究という形で実施され、学術的な視点から各国の制度や取り組みを分析する。 また、文化庁はこの調査事業とは別に、国内の具体的な活動を支援する「文字・活字文化資源活用推進事業」も実施している。これは、地域における書店、出版社、文学館、図書館、大学などの関係機関が連携した文字・活字文化振興の取り組みを支援する事業だ。事業規模は1件あたり800万円を上限とし、採択件数は4件程度が見込まれている。
文化庁東京庁舎(画像は文化庁のHPより)
今後の展望
文化庁は、今回の調査研究で得られた国際的な知見を、国内の図書館関係者や出版業界、教育現場と共有し、日本の実情に合った実効性のある振興策を立案するための基礎資料としたい考えだ。日本の豊かな文字・活字文化を次世代にどう繋いでいくのか、そのヒントを探る取り組みとして、研究の成果が注目される。