あしなが高校奨学金、採用は過去最多も4割に支援届かず 物価高が遺児家庭を直撃
遺児や親に障がいがある子どもを支援する「一般財団法人あしなが育英会」は9月22日、2025年度の高校奨学金の採用状況を公表した。それによると、申請者3,217人に対し、採用者は過去最多の1,878人となったものの、依然として申請者の4割にあたる1,339人には支援が行き届かない厳しい実態が明らかになった。同会は、奨学金ニーズの高さの背景に物価高や格差の拡大などがあるとみている。
同会の高校奨学金は、返還不要で月額3万円を給付するもの。2025年度の申請者数は過去2番目に多い3,217人にのぼり、依然として高い奨学金ニーズが続いている。
これに対し同会は、街頭募金などで寄せられた支援により、採用者数を前年度から340人増やし、過去最多の1,878人とした。これにより、2024年度に過去最低の44.1%まで落ち込んでいた採用率は58.4%まで回復した。しかし、それでもなお、1,339人の高校生が支援を受けられない状況に置かれている。
一般財団法人あしなが育英会提供
奨学生家庭の困窮度は深刻だ。同会が東京都立大学子ども・若者貧困研究センターと共同で進めている高校奨学生3,487世帯を対象とした生活実態調査の速報値では、保護者の54.5%が過去1年間に「食料を買えなかった経験がある」と回答。さらに33.8%が公共料金や家賃、税金などを滞納した経験があると答えており、経済的な支援の必要性が浮き彫りとなっている。
この状況を受け、同会の大学奨学生らで組織する「あしなが学生募金事務局」は、10月18日から全国136か所で「第110回あしなが学生募金」を実施する。10月11日には新宿でオープニングセレモニーを開催し、学生約30人が支援を呼びかける。募金は、2分の1を国内の遺児支援などに、2分の1をサブサハラ・アフリカ49か国の遺児の高等教育支援に充てられる。
7月5日に急逝したあしなが運動創始者の玉井義臣氏の遺志も引き継ぎ、学生たちは、支援を必要としながらも奨学金を受け取れない仲間がいる窮状を訴え、社会に支援を呼びかける方針だ。
教育の機会均等が叫ばれる中、経済的な理由で学びの継続が困難になる子どもたちが、今なお数多く存在する。その現実に対し、社会全体でどう向き合っていくかが改めて問われている。