最先端の論文から読みとくイノベーションの本質とは?

ビジネスでもエビデンスに基づいた判断が求められている。4月に著書『イノベーターのためのサイエンスとテクノロジーの経営学』を上梓した早稲田大学ビジネススクール准教授の牧兼充氏に、科学的思考法の意義とイノベーションに関する示唆的な論文について話を伺った。

データから因果関係を推論する
科学的思考法を身につける必要性

牧 兼充

牧 兼充

早稲田大学ビジネススクール准教授
カリフォルニア大学サンディエゴ校で博士(経営学)取得。政策研究大学院大学助教授、カリフォルニア大学サンディエゴ校講師、慶應義塾大学助教・助手などを経て現職。有効なイノベーション政策のあり方について模索している。主な兼職として、カリフォルニア大学サンディエゴ校ビジネススクール客員准教授。主な著書に『イノベーターのためのサイエンスとテクノロジーの経営学』(東洋経済新報社)。

企業が新規事業開発を進める際、他社や他業界のベストプラクティスを実践しようとして、その事例の前提条件などを検証しないまま失敗するケースがある。そうした誤った判断をしないためには、科学的思考法(データの中から因果関係を推論するプロセス)を身につけるべきと、早稲田大学ビジネススクール准教授の牧兼充氏は指摘する。

「例えば、因果関係と相関関係の違いが曖昧な人も意外と多くいます。因果関係が成り立つ要因を整理したり、バイアス(結果に偏りを生じさせる要因)が排除されているか検証する。こうした科学的思考法が身についていないと『この広告を導入すれば、売り上げが3倍になります』といった誘い文句を簡単に信じてしまうリスクがあります。米国では『エグゼクティブPh.D.』と呼ばれる、博士レベルの実務家養成プログラムが広がっており、ビジネスでも科学的思考法に基づいて意思決定をすることは非常に重要です」

(※全文:2352文字 画像:あり)

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