インフォデミックとどう向きあう? SNS上の医療健康情報のリスク

WHO(世界保健機関)が公衆衛生上の脅威と指摘する「インフォデミック(Infodemic)」。指摘の背景には、ここ10年ほどで劇的に進んだSNSの普及がある。SNS上の医療健康情報を見極めるポイントと、インフォデミックと向き合い方を考える。

本連載の第1回でも触れましたが、インフォデミックとは情報(Information)と、病気の流行を意味するエピデミック(Epidemic)を合わせた造語です。WHOの定義によれば「疾病の流行時に、デジタル空間および実社会において、誤った情報や誤解を招くような情報を含む情報が多すぎ、それにより適切な予防行動が妨げられたり、保健当局への信頼感が低下すること」とされています。注目すべきは、「誤解を招く情報を含む情報が多すぎる状態」とされているところです。回りくどい表現だなあと思われるかもしれませんが、実はこの部分こそがポイントです。

「膨大な情報に触れられる状態」
のリスク

市川 衛

市川 衛

2000年、東京大学医学部健康科学・看護学科卒業後、NHK入局。
医療・健康分野を中心に国際的に取材活動を展開。2016年スタンフォード大学客員研究員を経て、2017年一般社団法人メディカルジャーナリズム勉強会を設立し代表に就任。2021年にNHKを退職後は、READYFOR株式会社 基金開発・公共政策部門の責任者として社会課題の解決のため活動する団体の支援事業を行う。2020年より広島大学医学部客員准教授(公衆衛生)に就任。東京大学、産業医科大学などで医師や医学生を主な対象に教育活動を行っている。

インフォデミックという語感から「一部の発信者が不適切な情報を拡散している」姿をイメージされるかもしれませんが、それが問題の本質ではありません。近年、TwitterやFacebook、YoutubeなどSNSが普及したことにより、誰もが洪水のような情報に触れられるようになりました。SNSの投稿や動画は、日々膨大な量が更新され、プラットフォームの推薦システムに従い、適切な情報も不適切な情報も同列にタイムライン上で提示されます。

その結果、適切な情報と不適切な情報の見分けがつかなくなり、通常であれば冷静な判断ができるユーザーが偏った情報選択を行ったり、不適切な情報を他者に向けて拡散したりするケースが出てくるのです。結果として、多くの人が適切な予防行動(マスクの着用やワクチンの接種など)を避ける事態が起きれば、…

(※全文:2018文字 画像:あり)

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