基礎研究と臨床研究、その違いとは 〜医師も混乱する、複雑な事情

新聞やネットニュースなどで「基礎研究」「臨床研究」という言葉を見たことがあるかもしれない。語感からなんとなくの意味は想像できるが、実はこの言葉、少し特殊な使われ方をしているようだ。今回は医療ニュースを読むときに意識したい2つの「研究」について解説する。

市川 衛

市川 衛

2000年、東京大学医学部健康科学・看護学科卒業後、NHK入局。
医療・健康分野を中心に国際的に取材活動を展開。2016年スタンフォード大学客員研究員を経て、2017年一般社団法人メディカルジャーナリズム勉強会を設立し代表に就任。2021年にNHKを退職後は、READYFOR株式会社 基金開発・公共政策部門の責任者として社会課題の解決のため活動する団体の支援事業を行う。2020年より広島大学医学部客員准教授(公衆衛生)に就任。東京大学、産業医科大学などで医師や医学生を主な対象に教育活動を行っている。

今回も質問から。「基礎研究」という言葉の説明として、次の4つのうちのどれが最もふさわしいでしょうか?
1)筋肉の動きなど、生物の基礎的な働きに関する研究
2)具体的な用途や応用を直接的な目的にしていない研究
3)医薬品の候補としたい物質を、細胞などに与えて反応を見る研究
4)物理学や数学などで、様々な理論の基礎となる仕組みを調べる研究

正解は2)です。いま世界中で行われている数多の研究は、「具体的な応用の用途があるかどうか」で大きく2つに分けることができます。例えば「ブラックホールの成り立ちを調べたい」とか、「細胞が分裂するときに、どんな遺伝子の変化が起きているのか確かめたい」というような研究は、すぐロケット開発とか医薬品の製造などに応用出来るわけではありません。一方で…

(※全文:2360文字 画像:あり)

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