障害のある生徒の進路 7割が希望通りに進めず 最大の壁は「企業とのマッチング機会不足」

障害のある生徒の多くが「一般企業への就職」を望んでいるにもかかわらず、約7割が希望通りの進路に進めていないという深刻な実態が、障害者就労支援を手がける株式会社スタートライン(本社:東京都三鷹市)の9月25日に公表した調査結果によって明らかになった。進路実現を阻む最大の要因として、教員の44%が「学校や支援機関と企業をつなぐマッチング機会の不足」を挙げており、生徒の意欲と社会の受け皿との間に大きな隔たりがあることが浮き彫りとなった。 本調査は、障害のある生徒の進路指導に携わる教員102名を対象に、2025年7月30日から8月1日にかけてインターネットで実施された。

生徒の希望は「一般企業で健常者と共に働く」

調査によると、障害のある生徒が卒業後に最も希望する進路は「一般企業への就職」が53.9%と過半数を占めた。希望する働き方についても、「健常者と同じ環境で働きたい」が37%で最多となり、社会の一員として共に働きたいという強い意志がうかがえる。

株式会社スタートラインのプレスリリースより

約7割で希望叶わず…原因は情報と機会の不足

しかし、その希望とは裏腹に、教員の約7割が「担当した生徒が希望する進路に進めなかった」と回答。希望が叶えられなかった理由として、「将来に対する漠然とした不安」と「進路先に関する情報不足」が同率でトップに挙げられた。 さらに、一般企業への就職における具体的な課題としては、「学校や支援機関と企業をつなぐマッチングの機会が少ない」(44%)が最も多く、次いで「企業の求人情報・募集枠が少ない」(30%)、「企業の受け入れ体制が整っていない」(28%)と続いた。

生徒の意欲や能力以前に、適切な情報提供と企業と出会う機会そのものが不足している現状が課題となっている。

連携と多様な選択肢の重要性

本調査について、同社の障害者雇用エバンジェリストである吉田瑛史氏は、「企業・学校・支援機関が一体となり、進路情報の透明性を高めるとともに、職場体験やインターンシップなど、実際の働く場に触れる機会を増やすことが不可欠」とコメント。生徒と企業のミスマッチを防ぎ、双方の理解を深めるための「連携」の強化を訴えた。 また、吉田氏は「『健常者と同じ環境で働きたい』という希望が最多である一方、『障害者同士で働きたい』『在宅で働きたい』といった多様なニーズにも耳を傾ける必要がある」とも指摘。画一的な働き方だけでなく、生徒一人ひとりの特性や希望に合った多様な選択肢を社会全体で用意していくことの重要性を強調した。

今回の調査は、障害のある生徒たちの前向きな就労意欲と、それを十分に受け止めきれていない社会構造とのギャップを明確に示した。教育現場と社会がより一層連携を深め、生徒たちが安心して未来を描ける環境をいかに構築していくかが問われている。