文科省 マテリアル分野の「知のインフラ」を9月末から共用開始 26機関連携、研究と教育のDX加速へ
文部科学省は8月26日、国内26の大学・研究機関が連携して構築した大規模な「マテリアルデータ基盤」を、9月30日から学術界・産業界に向けて共用開始すると発表した。個々の機関の垣根を越えてAI等が利用しやすい形式のデータを集約・提供することで、日本のデータ駆動型マテリアル研究開発を加速させるとともに、次代を担う人材育成にも活用されることが期待される。
この取り組みは、文科省が2021年度から進める「マテリアル先端リサーチインフラ(ARIM)」事業の一環。材料開発は従来、研究者の経験と試行錯誤に依存してきたが、近年はAIなどを活用する「マテリアルズ・インフォマティクス(MI)」が世界の主流となりつつあり、日本の国際競争力強化が課題となっていた。
ARIM事業では、全国26の大学・研究機関が持つ先端設備を共用化し、そこで創出された実験データをAI等が解析しやすい「構造化データ」として収集・蓄積。事業開始から4年で100万件超のデータを集め、このうち非共用期間を終えた約11万件から共用を開始する。データには、成功例だけでなく、従来は共有されにくかった「失敗データ」や詳細な実験プロセス情報も含まれており、新たな知見の創出に繋がると期待されている。
文科省の公式ホームページより
教育分野での活用も期待される。このデータ基盤は、若手研究者や学生がデータサイエンスの思考や最新の計測技術を学ぶための実践的な教材としても利用できる。実際の測定データを用いた演習を通じて、若手研究者や学生のデータサイエンス習得など人材育成活動への貢献も見込まれる。
利用は年間定額制で、専用サイトから申請する。文科省は、この「知のインフラ」を通じてデータ駆動型マテリアル研究開発のさらなる加速を期待している。