マインクラフト活用のオンライン療育 不登校・発達障がい児に前向きな変化
特定非営利活動法人ここのばは8月20日、同法人が提供するマインクラフトを活用したオンライン個別療育プログラム「GLOBAL GAME」が、発達障がいや不登校の子どもの社会参加にポジティブな影響を与えているとする利用者の事例を公開した。ゲームを入り口とした支援が、子どものコミュニケーション能力の向上や、段階的な学校復帰につながっているという。
「GLOBAL GAME」は、子どもが自宅から自分のペースで他者と関わり、学びの習慣や自信を育むことを目指すオンライン療育プログラム。今回公開されたのは、不登校と発達障がい(自閉スペクトラム・学習障がい)を抱える子どもの保護者による報告だ。
報告によると、当初はスタッフとの意思疎通も困難だったが、プログラム参加後は自分のやりたいことを言葉で伝えられるようになり、積極性が向上。マインクラフトを通じて自然とローマ字や漢字に触れるなど、学びへの意欲も見られるようになったという。
最も大きな変化として、これまで不登校だった状態から、放課後登校や短時間登校、さらには校外学習に参加できるようになるなど、少しずつ学校へ通えるようになった点が挙げられている。
このような効果は、海外の教育・療育現場の事例とも合致する。マインクラフトのような仮想空間では、対面でのコミュニケーションに困難を抱える子どもも、チャットや音声など自分に合った方法で自己表現がしやすい。支援教育の現場では、場面緘黙の傾向がある児童がゲーム内では仲間と積極的に関わったという報告もあり、ゲームが自己表現のハードルを下げることが示唆されている。
特定非営利活動法人ここのばの公式ホームページより
こうした実践は、学術的な研究によってもその有効性が裏付けられつつある。アメリカ国立医学図書館のデータベースで公開された論文(Kilmer E et al., 2023)では、セラピーとして応用されたマインクラフトのグループが、自閉症やADHDを持つ若者の「社会参加、自信、能力」を支援する上で特に適していると報告。論文は、ゲームが失敗のリスクが低い安全な環境を提供し、チャットや建築といった多様なコミュニケーション手段を通じて、従来の対面グループよりも参加者の自律性を高めると分析している。
海外では、論文の著者が以前所属していたアメリカのNPO「Game to Grow」などがマインクラフトを使ったソーシャルスキルトレーニングを実践。療育スタッフの支援のもと、子どもたちが協力して課題をこなす中で、自然とコミュニケーションの練習ができるよう設計されている。
保護者は「はじめは『ゲームで療育になるのか?』という不安もありましたが、今ではその印象は大きく変わりました。息子の変化を見て、『マイクラはただの遊びではなく、子どもの力を引き出す立派な支援ツール』だと実感しています」とコメント。同NPOは、子どもの「好き」を起点としたアプローチが、自信の回復と社会との接点拡大に繋がる新しい支援の形となり得ることを示している。