国立青少年教育施設、半減した利用者数を受け大規模な再編・機能見直しへ 文科省が方針公表
文部科学省は8月6日、全国に28か所ある国立青少年教育施設について、施設の数や規模の見直しを含む大規模な機能強化・再編を進める方針を盛り込んだ報告書を公表した。新型コロナウイルス感染症拡大以降、利用者数が平成30年度比で約5割の水準まで落ち込んでいる深刻な事態を受けたもので、次期中期目標期間(令和8年度から令和12年度)中に全施設の在り方について結論を出すとしている。青少年教育の根幹を支えてきた施設の在り方が、大きな転換点を迎えた。
背景に「利用者5割減」の衝撃と社会構造の変化
報告書によると、国立青少年教育施設の利用者数はコロナ禍で激減。その後もオンライン研修・打合せの普及、余暇の多様化、学校の働き方改革等の影響が複合的に作用し、回復が鈍化。現在も平成30年度比で約5割の水準にとどまり、極めて厳しい状況が続いている。
さらに深刻なのは、令和6年度の各国立施設における宿泊室稼働率で、約半数の13施設が40%を下回っている現状だ。加えて多くの施設で建物の老朽化が進んでおり、築50年を経過した建物が全体の約25%を占めている。
少子化の進行も追い打ちをかけている。令和6年度の公立小中学校数は平成元年と比較して約22%(7,647校)減少しており、主要な利用者である学校団体の母数そのものが縮小している。
"聖域なき見直し"へ ― 「拠点施設」を定め機能分化
こうした事態を受け、文科省は「国立青少年教育施設の振興方策に関する検討会」での議論を経て、再編方針を打ち出した。拠点施設については全国の施設を複数のエリアに分け、指導者育成やプログラム開発を担う中核的な「拠点施設」を設定し、機能を強化するとした。
また、拠点以外の施設については施設の数や規模、宿泊定員の見直しを含めた、機能の適正化や再編の検討を進めるとした。目標管理の徹底を掲げ、数値に基づいた客観的な経営判断を行い、目標達成度に応じて予算などの資源を重点配分することとした。
文科省の公式ホームページより
次期中期目標期間中に全施設の結論目指す
文科省は、拠点施設の設定と機能別分化の検討を速やかに開始し、結論が出た施設から順次取り組みを進めるとしている。遅くとも次期中期目標期間(令和8年度から令和12年度)中には、すべての施設の在り方について具体的な結論を得るべきだとした。
報告書では「この困難を打開し、持続可能な青少年教育の実現に向けた青少年機構の改革は、待ったなしの状況である」と危機感を表明。単なる施設の統廃合ではなく、青少年教育のナショナルセンターとして「我が国の青少年教育の発展に先導的な役割を果たす」組織への転換を目指すとしている。
修学旅行や林間学校などで多くの児童・生徒が利用してきた青少年教育施設。今回の決定は、人口減少社会の中で「体験活動は人づくりの原点」という価値をどう再構築していくかという、日本の教育界全体への根本的な問いかけとも言えそうだ。