【文科省議事録詳報】基礎研究振興部会第23回、基礎研究に「推し活」の発想も
文部科学省は2026年8月21日、2026年7月27日に開催した科学技術・学術審議会の基礎研究振興部会(第23回、部会長・佐伯修九州大学マス・フォア・インダストリ研究所教授)の議事録を公開した。柱となったのは、大学の研究力を高める新制度と、基礎研究を社会全体で応援する仕組みづくりである。
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研究振興局大学研究基盤整備課大学研究力強化室の神部匡毅室長は、経済産業省と合同で設置したワーキンググループの議論を報告した。17の戦略分野を軸に高い研究力を持つ大学群「産業競争力・研究力中核大学群」を10年から15年支援する新制度が検討されており、国際卓越研究大学とJ-PEAKSの間を埋める枠組みと位置づけられる。小泉周委員(北陸先端科学技術大学院大学副学長・教授)は、両省が共に取り組む枠組みを「とてもいいスキームだ」と評価した。この議題は今回新たに設けられたもので、前回の第22回にはなかった論点である。
「WPI」統一ブランドで発信力を強化へ
世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)は約20年間で18拠点を形成してきたが、事業全体としての認知はまだ十分に広がっていない。前回の第22回では、事務局が戦略的マネジメント、スケールメリットを生かした取組、基礎研究推進のテストベッドとしての活用という3方向の考え方を示すにとどまっていたが、今回はその3方向が具体策に落とし込まれた。事務局はドイツのマックス・プランク協会を参考に、拠点を横断した統一ブランドとして発信力を高める方針を打ち出した。補助金終了後も研究水準を保てるよう、最大3億円を5年間追加する「成長・発展計画」も設けられ、11年目のIRCNとNanoLSIの2拠点が承認を受け、2027年度からの導入に向け準備が進む。
齊藤英治委員(東京大学大学院工学系研究科教授、理化学研究所創発物性科学研究センターチームディレクター)は、WPIのブランドの中身を言葉にしていく作業が重要だと指摘し、前田理委員(北海道大学大学院理学研究院教授、ICReDD拠点長)と上杉志成委員(京都大学物質-細胞統合システム拠点長、京都大学化学研究所教授)は、補助金が終了する際の不安定さが人材確保の壁になっているという現場の実感を語った。
基礎研究×クラウドファンディングで応援可視化
研究振興局基礎・基盤研究課の澄川雄課長は、基礎研究の重要性に見合うだけの認知や評価がまだ十分に得られていないという問題意識から、社会からの理解を広げる新しい切り口を探りたいとして本議題を設定したと説明した。事務局が示した科学技術・学術政策研究所(NISTEP)の調査では、科学技術への関心度は近年緩やかに低下しており、特に30代・40代で顕著だという。その具体策として挙がったのが、消費文化として定着した「推し活」の発想だ。READYFOR株式会社の佐藤沙弥ファンドレイジングソリューション室長は、これまでの実績として国立科学博物館の9.2億円の調達事例や、三毛猫の毛色を決める遺伝子研究など研究者の姿勢に共感した個人が資金を寄せる事例を紹介した。
第7期科学技術・イノベーション基本計画には「我が国において科学が文化となることを目指す」との記載があり、上杉志成委員はこの方針に賛意を示した。同委員は、新型コロナウイルス流行時に日本が科学の国とは言えない実態が明らかになったと指摘し、朝のニュース番組で星座占いを放送する先進国は珍しいと述べた上で、科学への関心が高まればニュースが増え、研究者への「推し」も広がり、それがさらに関心を呼ぶという好循環を作るべきだと訴えた。その具体策として、ふるさと納税の枠組みを大学への寄附に生かせないか、総務省と連携して検討してほしいと提案した。
一方、齊藤委員は数学と分子生物学では支援者の共感を得る構造が全く異なると述べ、分野ごとの違いを踏まえずに一律に語るべきではないと指摘した。松尾真紀子委員(東京大学大学院公共政策学連携研究部特任准教授)は、資金調達手段の多元化という観点からREADYFORの取り組みを評価した。この議題も第22回にはなく、今回新設された。
AI活用助成「SPReAD」、確定数値で狭き門に
研究振興局研究振興戦略官(人工知能活用担当)参事官補佐の轟木誠一郎氏は、AI for Science萌芽的挑戦研究創出事業(SPReAD)の第1回公募結果を報告した。前回の第22回は公募締切直後で、応募数は数倍の申請があったという感触レベルの説明にとどまっていたが、今回は応募1万5868件に対し採択456件、採択率2.9%という確定数値が示された。第22回で小泉委員が指摘した無作為抽出の透明性については、今回も納得感のある発信が課題として引き続き挙がった。
学生の応募をめぐっては、第22回で畑中美穂委員(慶應義塾大学理工学部化学科教授)が予算執行の危うさを懸念していたが、今回は指導教員の同意書提出を必須とする運用が説明された。想定を上回る応募が集まったことを事務局は歓迎しつつ、あらゆる分野への波及という事業目的から見れば採択枠が狭すぎるとの課題意識を示し、来年度予算要求に向けて採択規模の拡充を検討する考えを明らかにしている。なお、第22回の議題だったAI・ロボット分野の異分野連携については、今回の5議題には含まれなかった。