生成AI時代、人間にしかできないデザインとは 約8割が没個性化に危機感

生成AIの普及により、デザイン制作の現場は大きな変革期を迎えている。株式会社TARO WORKSが2025年9月11日~12日にマーケティング担当者、ブランド担当者、広告・販促部門の責任者1,004名を対象に実施した調査によると、85.1%が業務で生成AIや既成のビジュアル素材を利用する一方、79.0%がそれによるデザインの「没個性化」と「競合との差別化の困難さ」に危機感を抱いていることが明らかになった。効率化と引き換えに失われつつあるブランドらしさや人の手による表現の価値が、改めて問われている。

調査によると、「商品・サービスのビジュアルやプロモーションツールに生成AIや既成のビジュアル素材を採用したことがある」と回答した担当者は85.1%(「よくある」32.3%、「ときどきある」52.8%)に達し、その主なメリットとして「制作コストを抑えられた(51.6%)」「制作時間を短縮できた(44.6%)」「社内外のやり取りを減らせた(37.4%)」が挙げられた。デザイン制作の効率化は着実に進んでいることがうかがえる。

株式会社TARO WORKSのプレスリリースより

その一方で、「生成AIや既成のビジュアル素材を使用したデザインに不足していると感じる要素」として、「ストーリー性や世界観の伝達力(39.4%)」「感性や情緒に訴える力(34.6%)」「ブランドらしさの表現(33.6%)」といった、数値化できない情緒的な価値に関する声が多数を占めた。

この結果を踏まえ、「生成AIや既成のビジュアル素材の使用によりデザインが没個性化し、競合との差別化が難しくなると思うか」という質問に対し、79.0%(「非常にそう思う」26.0%、「ややそう思う」53.0%)が同意。多くの担当者が、効率化の恩恵を受けながらも、ブランド独自の表現力の低下に懸念を示している。

人間にしかできない表現領域に関しては「デザイン制作において、人の手による表現にはどのような価値があると感じるか」という問いに対し、回答は「ストーリー性や世界観を伝えられる(36.8%)」「感性や情緒に訴えられる(33.1%)」「ブランドらしさを表現できる(29.3%)」といった数値で評価しづらい点への反応が見られた。

「ブランディングをする上で、ビジュアルの独創性が果たす役割は大きいと思うか」という質問には94.1%(「非常にそう思う」43.3%、「ややそう思う」50.8%)が肯定的に回答。生成AI時代においても、ビジュアルの独創性がブランディングにおいて重要といえる。

一方、人間のクリエイターや制作会社への発注にも課題がある。「専門のクリエイターや制作会社に対して、商品やプロモーション用のビジュアルをオーダーメードで発注する際に課題を感じたことはあるか」という質問に、84.9%(「よくある」30.7%、「ややある」54.2%)が課題を感じたと回答。具体的には「言葉では伝えきれないニュアンスがあること(41.6%)」「ラフなど確認のやり取りに時間がかかること(35.0%)」「表現したいイメージを正確に伝えること(32.3%)」が挙げられた。

このような背景から、「独創的なビジュアル素材を課題を感じずに入手できるサービスがあれば利用したいか」という質問には、87.0%(「ぜひ利用したいと思う」32.7%、「やや利用したいと思う」54.3%)が利用意向を示した。

今回の調査は、生成AI時代のデザイン制作が直面する根本的なジレンマを浮き彫りにした。効率化のメリットは明確である一方、ブランドの独自性や感性における表現分野で、人間のクリエイティビティが依然として不可欠であることが示された。今後は、AIツールの効率性と人間の創造性をいかに融合させ、ブランドの独自性を保ちながら実務的な課題を解決していくかが、重要な課題となる。