学校教育におけるジェンダー平等には性別役割分業を弱める長期的な効果

明治大学政治経済学部の原ひろみ教授とニューヨーク市立大学ヌリア・ロドリゲス=プラナス教授は、共同執筆論文「中学校『技術・家庭』の男女共修化には、性別役割分業を弱める長期的な効果があった」において、性別で社会的役割が異なると生徒に認知させる教育カリキュラムが、その後の人生での意思決定・行動選択にも影響があることを明らかにした。1月30日、明治大学が発表した。

日本は、男女の賃金格差が大きい国の一つであることが知られている。その要因の一つとして、“チャイルド・ペナルティ”(子育てによる労働市場における不利益)や“ジェンダー規範”(「男性は外で働き、女性は家庭を守るべき」といった社会で共有される伝統的な性別役割分担に関する意識)の影響が大きな要因であると、近年、経済学の研究で指摘されている。

同研究では、性別役割分業とジェンダー規範を解消し、男女の賃金格差の是正につなげるためには、性別で社会的役割が異なると生徒に認知させない教育カリキュラムや学内活動が行われること、すなわち学校教育におけるジェンダー平等が重要であることを示した。

中学校で学ぶ「技術・家庭」は、技術分野と家庭科分野から構成される科目だが、1989年度まで男女別学だった。しかし、1989年の新学習指導要領への改訂により、男女共修となり、新学習指導要領への移行期間が始まった1990年度から男女共修となった。

分析結果によると、「技術・家庭」の男女共修化が、成人して30歳代後半になったときの夫婦の家計内での役割分担に影響を与えたことを明らかにした。具体的には、男女共修化によって、成人した男性(夫)の週末の家事関連時間が長くなり、一方、女性(妻)は非正規社員で働く人の割合が減り、正社員で働く人の割合が増えたことが示された。つまり、共修化が、男性の家事・育児分担と女性の働き方の両方に変化をもたらしたことを示唆している。さらに、伝統的な性別役割分担意識に賛成する女性(妻)の割合が減ることも示された。

同論文は、労働経済学の国際学術雑誌Journal of Labor Economicsに掲載が決まっている。分析結果の詳細はURL先を参照。

https://www.meiji.ac.jp/koho/press/2023/mkmht000000zd9iq.html

 

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