「博士人材追跡調査」第4次報告書を公表 科学技術・学術政策研究所

社会の激しい情勢変化に対応するためには、「知」の源泉となる研究力等の強化が不可欠であり、博士人材に期待される役割の重要性は、かつてないほど高まっている。しかし、日本の博士課程入学者数は、2003年度の1万8232人をピークに減少傾向にある。また、修士課程等から博士課程へ進学する者の割合も減少傾向が続いている。

こうした状況を打破すべく、科学技術・学術政策研究所(NISTEP)では、2014年から「博士人材追跡調査」(JD-Pro: Japan Doctoral Human Resource Profiling)を実施し、博士人材を巡る政策立案やその政策効果の評価検証等に不可欠なデータとして、博士課程進学前の状況、在籍中の経験、博士課程修了後の就業状況、研究状況等を把握し、客観的根拠に立脚した政策策定に貢献することを目的に、博士課程修了者のキャリアパスを継続的に追跡している。

「博士人材追跡調査」は、令和2年(2020年)に実施した2018年度博士課程修了者を対象に1.5年後の状況について調査した結果だ。同報告書については、「第6期科学技術・イノベーション基本計画 」(2021年3月閣議決定)が掲げる「人生を賭けるに値するとして、誇りを持ち博士後期課程に進学し、挑戦に踏み出す」社会の実現に向けて活用、貢献していく。

今回、報告書では以下の点が明らかになった。

・博士課程に在籍する前に社会人経験があると回答した者が初めて5割を超え、博士課程学生の年齢構成が30歳代を中心とするものへと変化した
・社会人経験のない学生で全額または一部の学費免除がなかったのは約5割、退職した社会人学生では約7割で全額または一部の学費免除がなかった
・修了後の雇用先は、全体で大学等が約5割、民間企業が約3割であった。大学等に就職した割合が高い分野は人文や社会、民間企業に就職した割合が高いのは工学分野であった
・今後のキャリア展望は、社会人経験の無い学生で多様化しており、アカデミア(大学や公的研究機関の研究者)で研究者としてポジションを得たいと回答した者約3割いる一方、雇用先や研究者にこだわらない、研究以外の仕事でも良いと回答した者、それぞれ約2割となった
・政府に望む博士課程学生への支援政策としては、研究者の研究環境改善、博士後期課程での給与支給を望む回答が最も多くそれぞれ2割を超えていた

報告書の詳細については、下記を参照。

https://www.nistep.go.jp/archives/50303

22.1.26news2

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