企業が専門職大学院に求めるのは「独創的な発想による問題解決能力」の涵養

文部科学省は4月24日、「専門職大学院におけるリカレント教育・リスキリングの現状・課題に関する調査研究」の報告書を公表した。

同調査研究は、文科省の「先導的大学改革推進委託事業」のひとつで、株式会社リベルタス・コンサルティングが昨年9月から10月にかけて実施。政府がリカレント教育・リスキリングを推奨する中で重要性が増す専門職大学院について、その現状や課題を、専門職大学院、社会人学生、企業それぞれへのアンケート調査およびヒアリング調査を通じて明らかにした。

専門職大学院については、専攻単位で実施。アンケート調査は法科大学院および教職大学院を除くすべての専門職大学院の80専攻、ヒアリング調査はそのうち5専攻を対象に実施した。

重視しているカリキュラムについては、「応用・実践問題の研究・学習に重点をおいた内容」が最多(88.5%)で、「座学のみならず、実習等実践的な講義」(74.4%)、「知識に基づいた深い洞察力を養う内容」(71.8%)がそれに続いた。ヒアリング調査でも、知識・理論を教授する授業と実践的な学習に取り組む授業を組み合わせ、高度の専門性と実践性の両方の育成を図る事例が見られた。

一方、課題については、「社会人や企業等への広報・周知」(60.3%)「企業等のニーズの把握」(50.0%)など多くの項目に、4割から6割の専攻が課題であると回答。ヒアリング調査では、30~40代の社会人学生に対する子育てと学習の両立支援が課題との意見があった。

社会人学生については、アンケート調査は在学生768名、修了生647名、計1,415名から回答を得た。ヒアリング調査はそのうち5名を対象に行った。

もっとも身に付いた(身に付けたい)知識・スキルについては、「業務に直接役立つ専門的・先端的・高度な知識・スキル」が30.1%で最多となった。ヒアリング調査でも、専門職大学院で身に着けたスキルを実際の業務で活用できているという意見が見られた。

課題については、「仕事と学習の両立による疲労」が最多(61.3%)で、次いで「勉強時間を確保するのが難しい」(57.2%)となった。「学習費用がかかる」も47.6%と多かった。ヒアリング調査では、仕事と学習に加え、家庭との両立に課題を感じている例も見られた。

企業については、アンケート調査は在学生あるいは修了生の所属先企業と、無作為抽出した上場企業、合わせて290社から回答を得た。ヒアリング調査はそのうち3社を対象に行った。

社員が専門職大学院に通う(通った)ことへの満足度については、78.7%が「満足している」(「とても満足している」+「満足している」)と回答した。

一方、課題については「本人の業務に支障をきたす」が最多(38.5%)で、次いで「部署等、周囲の業務に支障をきたす」(33.6%)となった。ヒアリング調査ではその他に、修了生の活用方法や定量的な評価、学習状況の把握、派遣対象者の要件の明確化などが挙げられた。

専門職大学院に求めるカリキュラム内容については、「独創的な発想による問題解決能力を養う内容」が最多(37.2%)で、「知識に基づいた深い洞察力を養う内容」(35.2%)がそれに続いた。

報告書は全162ページ。以下から読むことができる。

https://www.mext.go.jp/content/20240426-mxt_daigakuc01-000035614_1.pdf

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