阿部文科大臣、私立高入試での業者テスト利用「あってはならない」

2025年9月30日、阿部文部科学大臣は定例記者会見に臨み、教育行政の課題について見解を述べた。特に、埼玉県内の一部の私立高校における入学者選抜での業者テストの不適切な利用に対し強い懸念を表明したほか、グローバル卓越人材招へい研究大学強化事業(EXPERT-J)について、申請があった13大学の中から11大学を採択したことを報告した。

阿部大臣は、埼玉県内の一部の私立高校が、業者テストの成績を用いて合格や奨学金の確約を行っているとの報道について言及。一般論と前置きした上で、高等学校の入学者選抜は適切な資料に基づき行われるべきものであり、業者テストの結果を用いることは「あってはならない」と述べ、1993年に文部省が各所管庁へ発出した通知の趣旨を改めて強調した。現在、所管庁である埼玉県が事実関係の確認を進めており、文部科学省としてその対応を注視していく姿勢を示した。

また、大学ファンドを活用した新たな取り組みとして、グローバル卓越人材招へい研究大学強化事業(EXPERT-J)について、申請があった13大学の中から11大学を採択したことを報告した。この事業は、内閣府が本年6月に取りまとめたJ-RISE Initiativeの実現に向けた緊急的取り組みの一環であり、科学技術振興機構(JST)に設置された外部専門家委員会による審査を経て決定された。優秀な海外の研究者や大学院生に対し世界水準の環境を提供し、日本への定着を目指す。阿部大臣は「これにより我が国の国際頭脳循環が強化され、研究力の向上が図られる」と期待を表明した。

科学技術振興機構の公式ホームページより

教員の働き方改革に関連しては、9月26日に通知された改正給特法(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)に伴う指針にも触れた。働き方改革の実効性を高めるには教員一人ひとりの業務改善意識が重要であるとし、人事評価制度が「頑張っている教師に報いるための基本的な制度」であるとの認識を示した。地方公務員法に基づき、各教育委員会に対し適切な運用を指導していく方針と話した。

このほか、地震調査研究推進本部長として、先日公表された南海トラフ地震の新たな長期評価にも言及。30年以内の発生確率が幅のある数値で示されたことについて、「最新の科学的知見を取り入れても、発生確率が高いという評価は変わらないことが重要」と述べ、国民に引き続き防災対策と日頃からの備えを呼びかけた。