文科省、学校給食の安定運営へ通知 契約改善や熱中症対策求める

文部科学省は2025年9月16日、全国の教育委員会や学校設置者などに対し、「学校給食の安定的な運営に向けた取組の推進について」の通知を出した。この通知は、継続的な物価高騰に加え、学校給食を取り巻く環境の大きな変化に対応するものだ。

2023年度の学校給食実施状況等調査では、調理・洗浄・運搬業務を外部委託している学校が5割を超えることが明らかになり、2024年度に実施した調査では、事業者との間で契約書が作成されていなかったり、やり取りが依然として電話やFAX中心であったりするなど、DX化の遅れといった課題も浮き彫りになった。さらに2025年4月1日から「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律及び貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律」(通称、物流効率化法)が施行され、6月1日からは労働安全衛生規則が改正され事業者に熱中症対策が義務付けられるなど、食材調達や労働環境の整備も進められている。

物資の納入業者との毎回の発注時における取引方法についてのグラフ。牛乳、ごはん(米)、パン、生鮮食品、加工食品いずれも「発注書・見積書等の書式を使用している」の回答が多いが、次いで「特定の書式は使用せず、FAXの文面でやりとりをしている」の回答が多い(文部科学省の公式ホームページより)

こうした背景を踏まえ、通知では子どもたちに栄養バランスの取れた食事を安定的に提供するため、具体的な取り組みを求めている 。まず事業者の選定にあたり、安さだけでなく事業の安定性といった価格以外の要素も考慮するよう求めている 。特に一般競争入札などでは、不当に低い価格での契約、いわゆるダンピング受注を防止するため、地方自治法施行令に定められた低入札価格調査制度や最低制限価格制度、総合評価落札方式の活用を促した 。総合評価落札方式を導入する際には、衛生管理基準の理解度や調理経験、人材育成・労務管理の体制なども評価項目として設定するよう例示している 。

事業者との適切な契約の締結と運用の問題に関しては事業者とのトラブルを防ぐため契約書の作成を徹底するとともに、契約期間中の光熱水費や最低賃金の変動に対応できるよう、契約金額を見直せる「スライド条項」をあらかじめ盛り込むことを推奨している 。さらに、慣行として残る電話・FAXでのやり取りを原則廃止しDXを推進することや、「物流効率化法」への対応として、ドライバーの待機時間短縮に向けた納品時間の見直しや共同配送への協力にも努めるよう呼びかけている 。

また、給食調理施設における労働環境に関しては高温多湿になりやすい調理施設での熱中症対策の実施を徹底するよう求めている 。これは労働安全衛生規則が改正され事業者に熱中症の重篤化を防ぐ体制整備、手順作成、関係者への周知が義務付けられたことを受けたもので、学校側に対しても、空調設備の設置やドライシステムの導入を推進するよう求めている 。業務を外部委託している場合でも、施設・設備の改善といった作業環境については設置者が主体的に対応を検討する必要があることにも言及している 。今回の通知は、学校給食が直面する現代的な課題に包括的に対応し、持続可能な運営体制を構築することを目的としており、各学校設置者には事業者との連携を密にし、具体的な改善に取り組むことが求められる 。