コラム・教育の未来構想① ~マイクロクレデンシャルの普及~

近年、学校教育は大きな変革の時期を迎えている。コロナ禍によるオンライン授業(ハイブリッド方式やハイフレックス方式など)の普及や、アクティブラーニングに代表される反転授業の導入、MOOCs(Massive Open Online Courses)などのインターネットを利用した公開講座などでの学習プラットフォームの構築など、ここ数年でも学校教育では大きな変革が起きている。今回、話題として取り上げるマイクロクレデンシャルも今後の学校教育の在り方について大きな影響を与える1つである。本稿では、マイクロクレデンシャルの普及によって学校教育はどう変わるのか、そのためには何が必要なのかについて説明する。

マイクロクレデンシャルとは

マイクロクレデンシャルとは、大きなコストを要する学位という形式に捉われずに「学習内容をより詳細な単位に分け個別に認証する方法のこと」をいう(参考:「マイクロクレデンシャルとは?」URL:https://transborder.jp.net/micro-credential/)。日本版MOOCsとしてオンライン大学講座(JMOOC)を提供する一般社団法人日本オープンオンライン教育推進協議会の調査によると、JMOOCの延べ学習者は約119万人となり(2020年5月8日現在)、毎年の登録者数も増加し成長を続けている。マイクロクレデンシャルは、「デジタルバッジ」(電子証明書)の普及によって、インフォーマルな能力の証明として活用が進んでおり、日本国内のMOOCs等でもいくつかの講座で、デジタルバッジが利用され始めている。

マイクロクレデンシャルの有効性と課題

今後、マイクロクレデンシャルによって細分化された学習内容について認定することが可能となり、情報学士や経営学修士など単一の学位の取得ではなく、個々の学習によって身につけた技術についてのデジタルバッジを得ることができる。社会人にとっては、新しいスキルを迅速・継続的に習得し、常に最新の技術や世間の変化に対応しなければならず、そのためには1つの学問領域の知識を継続的に得るのでなく、分野をまたいだ技術と知識を横断的に習得していくことが重要となり、未来のキャリア形成の1つとしてマイクロクレデンシャルの取組みは社会人にとっても理想的・効率的な方法であるといえる。ただマイクロクレデンシャルの普及については、デジタル格差の問題や教育目的のずれなど、いくつかの課題があり、今後、大学教育のDX化の1つとしてマイクロクレデンシャルをどう普及し定着させていくかについては引き続き慎重な議論が必要である。

★画像名 河合孝尚
事業構想大学院大学教授。静岡大学大学院理工学研究科博士課程修了。情報学博士。2022年4月1日より事業構想大学院大学教授として着任。経済産業省安全保障貿易自主管理促進アドバイザーや他大学の講師等を兼任。これまでに大学におけるリスクマネジメント等に関する実務を多数行ってきた。また教育研究活動として、Well-being教育や、研究公正教育等の教育システムに関する研究を行っている。主な研究分野は、教育情報学、研究インテグリティ、リスクマネジメントなど。

22.8.9news1

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