ノーベル経済学賞、女性の労働が専門のC・ゴールディン氏が受賞

スウェーデン王立科学アカデミーは10月9日、2023年度のノーベル経済学賞をアメリカ人経済史家・労働経済学者でハーバード大学教授のクラウディア・ゴールディン氏(1946年- )に授与することを発表した。女性の受賞者は過去にも二人いるが、いずれも合同での受賞。単独での受賞は氏が初めてだ。

女性の活躍は、氏の研究テーマでもある。当初は別のテーマ(奴隷制を含むアメリカ南部の経済史)を研究していたが、その過程で労働経済学から女性の労働が抜け落ちていることを発見。膨大な資料を読み解き、アメリカにおける女性の労働市場への進出の歴史を明らかにした。

氏の功績のひとつが、女性の社会進出は右肩上がりに進んだわけでないことを明らかにしたことである。女性の就業率は、主要産業が農業から工業に変化した19世紀初頭に減少、その後20世紀初頭にサービス産業が成長すると増加し、「U字カーブ」を描くことを明らかにした。また20世紀後半、特に1970年代に進行した女性の高学歴化と晩婚化について、その背景に経口避妊薬の普及と、それによる早婚の減少があることを明らかにした。

このように、経済史と労働経済学の手法を組み合わせることで、女性の社会進出についてはじめて総合的な記述をもたらした点が評価され、今回の受賞に至った。

なお、『先端教育』12月号の特集は「ダイバーシティ経営」。女性の活躍についても取り上げている。

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記者会見の様子。ハーバード大学ホームページより