誰もが自分の生き方に「誇り」を持てる社会へ

「一人ひとりが、自分の生き方に誇りを持てる社会へ」というビジョンのもと、エナジードは一人ひとりが自分らしく輝き、社会に価値を生み出す、自己効力を育む教育モデルの構築に取り組んでいる。代表取締役の氏家光謙氏に教育による社会変革に向けたビジョンなどを聞いた。

主体性や自己効力を育む教育機会が
新たな可能性を拓く
 

「かっこいい大人を増やす」をミッションに掲げるエナジードは「一人ひとりが、自分の生き方に誇りを持てる社会」に必要な構造をつくるためのサービスやプロダクトを提供。中高生向けの探究的な学習・キャリア教材「CORE」や成長データベース「LOUNGE」を展開している。 

代表取締役の氏家光謙氏は「人によって『かっこいい』の定義は違うので、目指すものはそれぞれ異なると思います。ただ、共通するのは、人が自分で考えて動くことによって良い変化を生み出せることを理解し、周りの誰かのため、社会のためにそれを使おうとするスタンスです。私たちは、主体性や自己効力は生まれ持ったものや家庭環境だけで決まるものではないと考えています。自分で考え、行動し経験を積むこと、そして周りからの肯定的なフィードバックによって身につけることができる。その学びの機会を早くから体系的に提供する環境を構築することが、教育の新たな可能性を拓くと考えています」と話す。 

同社は2025年6月、自己効力を軸にしたキャリアマネジメントシステム「LOUNGE」を正式にリリースした。同プロダクトは、"見えにくい育ち"──自己効力感(Self-Efficacy)や主体性、思考力の変化などを捉えやすくし、生徒に対して個別最適な関わりができるようになる仕組みだ。単なるICTツールではなく、学校の教育目標の実現に向けてデータで伴走するパートナーとして自治体・学校・塾向けに展開している。 

先生がやりたかった教育を
実現する仕組みを構築
 

「LOUNGE」は3つの特徴がある。1つ目は、生徒の「自信や頑張り」を捉えやすく、教員は行動判断できるようになること。AIによって生徒の実成長に向けた「観点」が生徒ごとに示されるため、クラス全体はもちろん、生徒一人ひとりへの適切な関わり方を教員が判断しやすくなる。 

2つ目は教科授業の「準備負担の軽減」「授業力の向上」と「学びに向かう力の向上」を支援できること。教科授業は主体性や自己効力を育む上で重要な場と捉え、授業力の向上に向けた機能を搭載。クラスの学習理解状況や、生徒のつまずき・理解の深さを分析する。授業準備や評価の負担を軽減しながら、「学びに向かう力の育成」に教員が具体的に取り組めるようになる。また学研との協業による「自己効力と学力の補完性に関する実証」で経たノウハウを活かしている。 

3つ目がキャリアパスポートのデータ化により進路指導・面談の質を大幅に向上したこと。生徒は自身の日々の思考や取り組み、「頑張り」が蓄積することによって「変化の履歴」が蓄積され、成長を客観的に把握できるようになる。 

「教育に携わる先生方が先生という仕事を選択したときにやりたかった教育を実現できる環境づくりが重要だと考えています。業務の効率化と同時に、先生方が理想とする教育を継続的に実践できる仕組みの構築が必要です」 

エナジード提供

また、生徒の多様化が進む中で、新しい教育手法への転換期を迎えていると氏家氏は語る。 

「これまでの手法に加えて、時代に即した新たなアプローチが求められています。私たちは、教育の目的設計から本質的な価値を提供したいと考えています」 

このため同社のアプローチは、教育現場との協働を重視している。 

「先生方と共に未来を創造するというスタンスで、教育現場に寄り添いながら持続可能なソリューションを開発しています」 

また、教育の成果について、氏家氏はこう話す。 

「教育が成果を出すには時間がかかると考えられることが多いですが、だからこそ成果に対してより真摯に向き合う必要があると考えています。教育に携わる者として、その効果を具体的かつ明確に生み出す責任があります。教育効果の可視化と育成の両方を統合的に提供することで、持続的な成長を実現したいと考えています」 

海外への展開も視野に
教育による社会変革のビジョン 

今後、教育を通じて実現したい社会変革のビジョンについて、氏家氏はこう話す。 

「最終的には、誰もが自分の生き方に誇りを持てる時代を創造したいと考えています。歴史上の変革者が新しい時代を切り拓いてきたように、教育という分野で世界的なイノベーションを起こしていきたいですね」 

同社が描く未来像は、従来の学力中心の教育観に対するパラダイムシフトにある。 

「個人の多様な能力を重視する教育が世界標準となる時代を実現したいと考えています。各学校への個別支援に留まらず、教育システム全体を革新する仕組みとして海外にも展開していく必要があります」 

また海外展開への展望について、氏家氏は統合的なアプローチを描く。 

「私たちが目指すのは、経済的成長のための教育と、個人の幸福を実現する教育を両立することです。これは多くの国が共通して求めている方向性だと考えています」 

また、氏家氏は日本の教育文化の特長について「日本の協調性や社会性を尊重した教育文化は価値ある資産です。一方で、海外では個人の思考力を実際の価値創造に転換する仕組みがより発達している印象があります」と話す。日本の良さも活かしながら新たな価値創造に結びつける教育モデルを確立したいと氏家氏は力を込める。 

「協調性や社会性を基盤としながら、それらを実質的な価値創造に結びつける教育モデルを確立したいと考えています。日本でこのモデルを実証し、経済と幸福感が調和するサイクルを世界に提供していきたいと考えています」 

最後に氏家氏は「かつて基本的人権の概念が普及する前には、誰もがその実現を想像できなかったと思います。同様に、学力だけではなく、人の誇りに直結した教育の一般化が世界標準となる時代を築いていきたい。一人ひとりが自分らしく輝き、それが社会全体の価値創造に繋がる世界を目指しています」と締めくくった。 

株式会社エナジード 代表取締役 氏家 光謙 UJIKE Mitsunori 

新卒でトレンダーズ株式会社に入社。IPOのタイミングで株式会社エナジードを設立。自分の生き方に誇りを持てる大人を増やすことを志し、中学・高校向け教材と生徒の成長データベース「ENAGEED」を開発。アフリカや南米での授業実証を経て国内展開し、1000校以上の学校に採択される。学校・企業向けの育成プロダクト「LOUNGE」を開発し、大手企業を中心に200社でサービスを採択される。