思春期の心の不調、身体症状の「数」が早期発見の鍵に 成育医療研究センター調査
国立成育医療研究センターの研究グループ(新野一眞氏、森崎菜穂氏ほか)は、10歳から15歳の小児2,268人を対象とした全国大規模調査の結果、頭痛や腹痛といった身体症状を訴える「数」が多いほど、抑うつ症状を持つリスクが著しく高まることを2025年9月2日に明らかにした。言葉で不調を表現しにくい子どものメンタルヘルス問題を、身体のサインから早期に発見する新たな手がかりとして、教育現場や家庭での活用が期待される。
調査によると、月に1回以上経験する身体症状(頭痛、腹痛、背部痛、めまい)が4種類ある子どもは、症状がない子どもと比較して、抑うつ症状を抱えるリスクが16.4倍に達することが判明した。また、抑うつ症状がある子どもの約86%が、何らかの身体症状を月に1回以上経験していたという。
国立研究開発法人国立成育医療研究センターの公式ホームページより
思春期の抑うつ症状は、学業不振や不登校、将来の精神疾患、さらには自殺にも繋がる深刻な課題だが、子ども自身が助けを求めることをためらったり、心の不調をうまく言葉にできなかったりするため、周囲の大人が気づきにくいという問題があった。
今回の研究成果は、この「見過ごされやすい心の不調」に対する具体的な着眼点を示すものだ。例えば、学校の養護教諭や担任教師が、特定の生徒が複数の身体的な不調を頻繁に訴えている場合に、背景にある精神的なストレスの可能性を考慮し、スクールカウンセラーや保護者と連携するきっかけとなり得る。
研究グループは、「子どもの訴える身体症状の『数』や『頻度』に注目することが、見過ごされやすい抑うつ症状の早期発見に役立ち、家庭や学校、プライマリケアの現場で活用できる簡便なスクリーニング方法になる可能性を示した」としている。今回の発見が、周りの大人が子どもの心の健康問題に早期に気づき、適切なサポートに繋げる一助となることが期待される。
この研究成果は、小児科領域の国際的な学術誌「European Journal of Pediatrics」に2025年8月20日付で論文として掲載された。