学生時代の運動経験 成人後の体力に影響 スポーツ庁調査

2025年10月12日、スポーツ庁は「令和6年度 体力・運動能力調査」の結果を公表した。1998年度からの長期的なデータ分析により、学生時代の運動経験が成人後の体力やスポーツ習慣と強い相関を持つことがデータで示された。

学生時代の運動が、大人になってからの健康を左右

今回の調査で最も注目すべきは、生涯にわたる健康とスポーツへの関わりにおいて、青少年期の過ごし方が重要な役割を果たしていることが示された点だ。 20代・30代の男女を対象とした分析では、学生時代に運動部活動などの経験が「ある」人は「ない」人に比べ、現在「週1日以上」運動する人の割合が1.5倍以上高い(経験あり50.5%、経験なし33.1%)という明確な相関が見られた。

スポーツ庁の公式ホームページより

この結果は、子どもの頃からの運動経験の確保が、将来の国民の健康増進にも繋がる重要な教育課題であることを示唆している。

30代・40代女性の体力低下が課題に

全体的な傾向として、成年や高齢者では体力の向上・維持が見られる一方、青少年では項目により向上と低下が混在しており、特に男子青少年の合計点は過半数の年代で低下傾向を示している。また、30代・40代の女性においては体力低下の傾向が顕著で、35~39歳女子の総合評価C以上の割合は60%後半から50%前半へと低下し、40歳代女子ではほとんどの項目及び合計点で低下傾向が確認された。

スポーツ庁、働く世代・子育て世代への支援を強化へ

これらの調査結果を受け、スポーツ庁は今後の取り組みとして、30代・40代の女性を含む働く世代・子育て世代を重点に、具体的な施策を推進していく方針を示した。その中核となるのが、企業や団体と連携して生活の中にスポーツを取り込む「Sport in Lifeコンソーシアム」の拡大だ。

また、従業員の健康増進に積極的な企業を認定する「スポーツエールカンパニー」制度の拡大や、地方公共団体による「運動・スポーツ習慣化促進事業」の推進と横展開も進めていく。さらに、学生時代の中で運動機会が減少しがちな大学期においては、レクリエーショナルスポーツをモデル的に実施するなど、運動環境の充実に向けた検討も進める方針だ。

今回の調査結果は、学校教育が単なる知識の伝達だけでなく、生涯にわたる心身の健康を育む上でいかに重要であるかを、客観的なデータで裏付けるものとなった。部活動の地域移行などが進む中、すべての子どもたちが質の高い運動経験を積める環境をどう構築していくか、教育現場のさらなる工夫と取り組みが求められる