オープンバッジを発行している高等教育機関は1割未満

文部科学省は4月25日、「大学等における学修歴証明書のデジタル化の普及及び社会への対応に関する調査研究」の報告書を発表した。

学位記、卒業証書、修了証書、成績証明書などの「マクロ・クレデンシャル」であれ、短期間の学修プログラムの履修証明書のような「マイクロ・クレデンシャル」であれ、個人の学修歴や能力を分かりやすく可視化することで、その活用を促したり、学び直しへの意欲を高めたりするとして注目されているデジタル学修歴証明書(「オープンバッジ」とも)。

大学をはじめとする高等教育機関において、その発行はどの程度行われているのか調べた。

調査は、文科省の委託を受けた有限責任監査法人トーマツが昨年12月、全国の大学、短期大学、専門職大学、専門職短期大学、高等専門学校を対象に実施。784校から回答を得た。

その結果、「発行のための仕組みを導入・運用開始済」との回答は9.7%にとどまった。「発行に向け準備中」もわずか4.8%だった。

一方、「情報収集のみ実施している(具体的な導入検討は未着手)」が23.9%、「特に検討・情報収集を行っていない」が46.4%、発行に消極的な機関が大半を占めた。

導入済もしくは準備中と回答した機関(n=114)に、発行に取り組むことにした理由について尋ねたところ(複数回答可)、トップ3は「在校生の就職活動における利便性向上のため」(74.6%)、「卒業生の就転職活動・海外赴任などの際の利便性向上のため」(69.3%)、「証明書発行事務の効率化(職員の負担軽減)のため」(63.2%)となった。

一方、検討も情報収集も行っていない機関(n=365)に、その理由について尋ねたところ、トップ3は「データ提出が必要な場合、紙の証明書をスキャン・PDF化することで事足りているため」(52.1%)、「これまでにデジタル発行を求められたり、問合せを受けたことが無いため」(50.1%)、「例年の証明書発行枚数に鑑みると、デジタル化によるコストメリットが生じにくいため」(38.4%)となった。

デジタル学修歴証明書の導入は一部の機関にとどまり、全体としては慎重な姿勢が目立つことが明らかになった。利便性や事務効率化を目的に取り組む動きはあるものの、多くの機関がコストやニーズの不透明さから導入に後ろ向きであることが浮き彫りになった。

調査結果の詳細は以下から確認できる。
https://www.mext.go.jp/content/20250408-mxt_daigakuc01-000041647_2.pdf

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