「次期教育振興基本計画」策定に向けた提言を公表 経団連

文部科学省の中央教育審議会が、「次期教育振興基本計画」(以下「次期計画」)策定に向けた検討を行っている中、経団連は10月11日、「次期教育振興基本計画」策定に向けた提言を公表した。

教育振興基本計画は教育基本法に基づき、教育基本法の理念の実現と、教育施策の総合的・計画的な推進を図るために策定されるもので、日本の教育行政における根幹的な計画といえる。2008年の第1期教育振興基本計画策定以降、5 年ごとに改定されており、次期計画は2023 ~2027 年度の期間となる。 

提言では、重要な施策について、目標と施策の進捗状況等を評価するための「指標」と「目指すべき水準(数値目標)」とを原則セットで設定し、意欲的な水準を掲げるべきとして、次期計画に掲げるべきと考える指標を17に整理、特に重要な指標として次の5つの指標を盛り込んでいる。 

(a)学習者用デジタル教科書の整備率を90%(← 2022 年3月35.9%)
(b)遠隔・オンラインと対面とのハイブリッド型授業が実施可能な小中高等学校の割合を100%(← 2022 年1~2月調査69.6%)
(c)文理を問わず、大学生・高専生全体に占める数理・データサイエンス・AI教育プログラム(リテラシーレベル)履修者の割合を100%(←データなし)
(d)6ヵ月以上、海外に留学する大学生数を3万人(← 2020 年度約900 人)
(e)大学等における起業家教育の受講者数を30 万人に増加(← 2020 年度約3万人)
〔目標年度:2027 年度〕()内は現時点の水準

また、提言では「優先的に取り組むべき教育政策の施策」について、①文理分断からの脱却、②デジタル人材の育成、③グローバル教育・海外留学、④キャリア教育・起業家教育等、⑤子どもの才能を伸ばす多様な教育機会の提供、⑥大学院教育、⑦リカレント教育、⑧教育DXの推進、⑨産学官の連携・協働を通じた、社会に開かれた学校づくり、に整理。

このうち、⑦リカレント教育に関しては、「企業は、社員がリカレント教育等を受講する際の経済的支援および休暇・休業制度の導入や、学び直しの成果を処遇・報酬と連動する仕組みの導入などの環境整備を検討すべきである」と指摘。

また、大学に対しては、「企業や働き手等のニーズも踏まえ、リカレント教育プログラムの拡充に取り組む必要がある。その際、オンラインの活用により、時間と場所に縛られない多様な履修形態を実施することが求められる。また、マイクロ・クレデンシャルを整備し、企業等において、従業員のスキル向上の観点から、活用を促進することが望ましい」としている。

さらに、政府に対しては、「リカレント教育の推進に向けた機運を醸成しインセンティブを付与するため、産学協働によりリカレント教育プログラムを開発・実施する大学や質の保証されたリカレント教育プログラムを実施する大学等に対して、財政面および教員確保等の支援を図ることが重要である。産学協働によるリカレント教育プログラムの開発には、企業・大学のニーズ・シーズのブラックボックス化の解消が不可欠であり、マッチング機能の充実が求められる」とした。

また、リカレント教育の充実には、実務家教員の活用も課題であると指摘し、「企業人が実務家教員として人材育成に貢献するうえで、大学にはクロスアポイントメント制度の積極的な活用が、企業には副業・兼業の活用推進が、それぞれ期待される」と述べている。提言の詳細は、下記URLで確認できる。
https://www.keidanren.or.jp/policy/2022/088.html

22.10.25news3

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