Z世代が語るAI就活生存戦略 最強の武器とは
AIの台頭は、新卒の就職活動をどう変えるのか―。若者向け教育事業を展開する株式会社OVER20&Company.が、Z世代のイノベーターたちと行ったディスカッションのレポートを公開した。そこでは「AIによって採用は厳しくなる」という悲観論と、「むしろチャンスだ」という楽観論が交錯。さらに、これからの時代を生き抜くためのユニークな生存戦略として「アブダクション(仮説的推論)」や「アイドル力」といったキーワードが提示された。
このディスカッションは2025年8月9日、同社が主催する『PROJECT any』に参加する10~20代の若者4名によってオンラインで行われた。代表取締役の糸井達哉氏がモデレーターを務めた。
賛成派からは「AIで業務効率化が進むと必要人数が減少する」「専門職(医者・会計士)もAIに代替されるリスクがある」といった意見が出された。また、「新卒に『価値ある感性』というものが本当にあるのか疑問」「SNS・AIの台頭によって『自分の意見がない』人が増加中なのではないか」という指摘もあった。
一方、反対派は「前例のない感覚が若者の強み、むしろ新卒にチャンス」「AIネイティブ世代はAIへの適応力が高い」と主張。「AIのデータは過去の西洋のものに偏っているため、次世代の外側の視点が価値になるのではないか」という見方も示された。
株式会社OVER20&Company.のプレスリリースより
特に注目すべきは、Z世代が自ら導き出した「AI時代の生存戦略」だ。一つ目は、AIが苦手とする「アブダクション(仮説的推論)」の能力。AIは帰納・演繹は得意だが、ある種の飛躍を伴う仮説的推論は苦手だという。
二つ目は「『オタク』であれ」という考え方。AIには真似できない超スペシャリスト、または超ゼネラリストに価値があるという指摘だ。
そして三つ目が「アイドル力」である。「この人と仕事したい」と思わせる人間力、自分だけの物語を語れる力が最強の武器になるという。
議論では、AIの影響をミクロ(個人レベル)で見るか、マクロ(より俯瞰した視点)で議論するかで立場が分かれることも明らかになった。
この議論は、大学のキャリア教育が今後どこに注力すべきかを強く示唆している。知識の伝達や既存スキルの習得だけでなく、学生一人ひとりのユニークな探究心(オタク性)を伸ばし、創造的な思考(アブダクション)を鍛え、自らの物語を語る力(アイドル力)を育むこと。AIが急速に進化する今、若者たちが見出した「人間にしかできないこと」の答えは、意外にもシンプルで、そして本質的なものだった。