大学支援フォーラムPEAKSが全体会合を開催 大学改革の在り方を議論
内閣府の大学支援フォーラムPEAKSは11月4日、令和3年度全体会合を現地・オンラインのハイブリット型式で開催した。全体会合では、PEAKSの活動紹介をはじめ、スタートアップ・エコシステム拠点の形成や、大学を取り巻く現状と改革の方向性などをテーマに、有識者の発表、参加者らの意見交換などが行われた。
大学支援フォーラムPEAKSは、産業界、大学等、政府関係者で構成。イノベーション創出につながる好事例を産学関係者で共有し、産学ともに横展開を進める、改革を進めるために現場が必要とする規制緩和等の政策を関係府省に提案し、制度改革につなげる、次世代の研究大学の経営層を育成するといった目的に向けて創設されたもの。今回の全体会合は、2019年の第1回から3回目の開催となる。
開会挨拶として登壇した小林鷹之内閣府科学技術政策担当大臣は、政府が年度内に創設を掲げる10兆円大学ファンドに関して、「(大学ファンドの運用益を通じて)国内外の若手をはじめとした優秀な研究者が日本で研究したいと願うような魅力的な研究環境をしっかり提供してまいりたい」とし、さらに、新たな分野への大胆な投資を可能とするようなガバナンス改革、企業との共同研究の拡大を通じて、新しい資金の流れをつくるための成長戦略を大学側にも求めていきたいと述べた。
大学支援フォーラムPEAKSは、産学連携、大学IR、評価、財務・経営、国際戦略など、テーマごとにワーキンググループを設置して、必要な制度改革に向けた政策アイデアなどを議論してきた。PEAKSの活動と政策形成に関して、総合科学技術・イノベーション会議常勤議員の上山隆大座長は、10兆円大学ファンドに関連して、真に世界と伍する研究大学と、会計・資産活用の2つのワーキングを作り議論を進めてきたこと、また、大学が経営体へ転換するにあたって課題と指摘される経営人材の育成に関して、イェール大学と共同で開発したオリジナルプログラムを紹介した(同プログラムは下記で受講者を現在受付中)。
https://www8.cao.go.jp/cstp/daigaku/peaks/program2021.html
続いて「世界と伍するスタートアップ・エコシステム拠点の形成に向けて」では、世界銀行東京開発ラーニングセンター(TDLC)チームリーダーのVictor Mulas氏と、スタートアップ支援を展開するStation Ai株式会社代表取締役社長兼CEOの佐藤宏隆氏がゲストスピーカーとして登壇。佐藤氏は、スタートアップ・エコシステム拠点形成における大企業の役割期待として、M&Aの加速、スタートアップとの事業共創、大企業人材の起業を挙げ、大企業人材の起業では、リスク<自信となるよう、起業後の雇用の担保、社内起業からのスピンアウト、出向起業制度の活用などを挙げた。
最後の「大学を取り巻く現状と改革の方向性について」では、合田哲雄 内閣府科学技術・イノベーション推進事務局審議官が大学ファンドの創設に関する概要や今後のスケジュール及び総合振興パッケージに関して紹介。また、尾上孝雄主査(大阪大学理事・副学長)が真に世界と伍する研究大学ワーキンググループの活動報告を、植草茂樹主査(植草茂樹公認会計事務所所長)が会計・資産活用ワーキンググループでの活動報告を行った。
これらを踏まえた意見交換では、来賓挨拶として登壇した甘利明衆議院議員をはじめ、オンライン参加した大学学長・総長、企業経営者らから活発な意見が交わされた。中でも経営体に向けて国立大学がガバナンス改革を進めて事業規模の拡張を進めるほど、独立行政法人通則法が準用される今の制度が足かせになる点を多くの参加者が課題として挙げ、そのために様々な法改正をひとまとめに行う必要があるとの声が上がった。なお本全体会合の詳細は、月刊先端教育2021年1月号に掲載予定。
開会のあいさつをする小林鷹之内閣府科学技術政策担当大臣