コラム・教育の未来構想② ~ナノディグリーへの取組み~

前回のコラムではマイクロクレデンシャルについて紹介したが、今回はマイクロクレデンシャルの1つである、米国大手企業のユダシティ(Udacity)がGoogleと共同して開発したナノディグリー(Nanodegree)について紹介する。

ナノディグリーとは
ナノディグリーは、データサイエンス、プログラミング、人工知能(AI)、アンドロイドまたはiOS開発、デジタルマーケティングなどの専門的なスキルの獲得・認定を目的としたオンライン教育プログラムである。ナノディグリーでは新しい高度なスキルの習得や、現在身につけている能力を向上させたい専門家をターゲットとしており、ナノディグリーで提供するオンライン教育プログラムを受講することにより、受講者は最新の技術開発スキルを身につけることができる。現在ではIT関連のカリキュラムのみ提供されているが、今後、あらゆる分野の教育カリキュラムを作成し提供していくといわれている。

ナノディグリーの特徴
ナノディグリーは従来のアカデミックプログラムとは異なり、オンラインのみの教育プログラムとなっている。これにより受講者はどこからでも教育プログラムにアクセスし、自分のペースで学習することができる。受講期間については、6〜12ヶ月で履修証明を獲得することができる。費用は、学習したい科目、プログラムの長さ、提供する組織によって異なるが、現在では6ヶ月のコースで1,200~2,400 USD、12ヶ月のコースで2,400~4,800 USDに設定されている。今後、ナノディグリーの需要が高まり続ければ価格はさらに上昇する可能性がある。

ナノディグリーについての考察
ナノディグリーは、Google、Facebook、GitHub、その他多くの米国の大手IT企業で高く評価されており、今後、日本でも普及する可能性が高い。近年のITテクノロジーの発展は目覚ましく、大学などで学んだ知識が卒業する頃には役に立たない古い知識になっている可能性がある。そのためナノディグリーのような熟練した経験豊富なデータサイエンティスト、AI研究者、エンジニアなどの各分野の専門家から最新の技術を学び、新しいスキルをオンラインで習得できることは現代に適した教育プログラムなのかもしれない。しかし一方で、終身雇用や格式などを重んじる日本において、ナノディグリーが受け入れられるのかは疑問である。日本においてナノディグリーが普及するためには、履修証明書の認定やオンライン教育の普及・定着、大学や企業等のナノディグリーへの理解など、いくつかの課題が考えられる。

コラム・教育の未来構想① ~マイクロクレデンシャルの普及~

22.9.2news1

画像はイメージ。Photo by stnazkul /Adobe Stock

 

★画像名 河合孝尚
事業構想大学院大学教授。静岡大学大学院理工学研究科博士課程修了。情報学博士。2022年4月1日より事業構想大学院大学教授として着任。経済産業省安全保障貿易自主管理促進アドバイザーや他大学の講師等を兼任。これまでに大学におけるリスクマネジメント等に関する実務を多数行ってきた。また教育研究活動として、Well-being教育や、研究公正教育等の教育システムに関する研究を行っている。主な研究分野は、教育情報学、研究インテグリティ、リスクマネジメントなど。