地域PM養成課程の修了生が集い、語る 地域を動かす9つの実践

社会構想大学院大学「地域プロジェクトマネージャー養成課程」は2021年10月の開講以来、273名の修了生を輩出してきた。2026年6月には、第3回目となる同窓会を開催。約50名の修了生が集い、本課程修了後の取組みなどに関して、9つのピッチセッションが行われた。

ブリッジ人材の育成を目指して
273名の修了生を輩出

社会構想大学院大学の「地域プロジェクトマネージャー養成課程」(以下「本課程」)では、地域活性へ向けた産官学連携プロジェクトを計画・運営する際に、様々な利害関係者の「架け橋」となり、プロジェクト全体をマネジメントする「ブリッジ人材」を育成する。

本課程は、地方自治体の現役職員や経験者、地域活性化や産官学連携を実践する専門家が、通常学習する機会の少ない「行政視点」を多く取り入れながら、地方自治体の考え方、地域活性化や産官学連携の手法・事例などについて、リアルかつ現在進行形の知識・スキルを提供。また、地方自治体に政策提言を行う機会も設けている。

本課程は2021年10月の開講以来、273名の修了生を輩出してきた。今回は2026年6月に開催した同窓会での修了生による9つのピッチセッションの概要を紹介する。

修了生によるピッチセッションの様子。

現場での気づきや実践から
生まれた新たな活動と提言

最初に9期生の岩見立氏が登壇。中高では吹奏楽部に所属し、長年に渡りトロンボーンを演奏してきた岩見氏は吹奏楽部の地域展開をライフワークにするため本課程を受講した。現在、部活動巡回指導員をしている。吹奏楽部だけでなく部活動全体に視野を広げた岩見氏は地域展開が全国で様々な取組みが試行される中、現場の課題などを指摘。「子どもたちが家庭や地域の状況に関わらず好きな活動を続けられる社会をつくりたい」と今後の抱負を語った。

続いて7期生の鹿取広幸氏が「継承する(TSUNAGU)こと」をテーマに登壇。鹿取氏は日本全体の元気の源が「地域プロジェクトマネージャー」にあると話す。また、信頼や志があって初めて想いは継承される。鹿取氏は「継承は想いを手渡していくことに尽きると思います」と話す。この他、信頼を育むためのコミュニケーションを講演会を通じて広げており、自身の活動内容を紹介した。

3人目は7期生の藤田正伸氏※1が本課程前後での気づき、修了後の活動を報告した。Webマーケターの藤田氏はアドレスホッパーとして全国を巡った際、地域課題を痛感し本課程を受講。修了後は主に2つの活動を展開。一つはデジタルマーケティングを軸に移住促進に携わっている。もう一つが「地域活性化起業人」だ。企業派遣型人材として様々な地域へ応募。地域おこし協力隊の採用、伴走支援の従事などを報告した。

同じく7期生の田内孝司氏は地域プロジェクトマネージャー制度におけるボトルネックの解消に向けた提案を行った。田内氏は地域の変革に必要なのは「移住」そのものではなく、事業を構想し束ねる「能力と経験知」だと指摘。住民票の異動を伴う完全移住が前提など、移住・定住ファーストな現行運用の課題を指摘。二地域居住など多様な居住形態を認める改善を提言した。

多様な手法で切り拓く
地域の未来、広がる実践の輪

ピッチセッション後半では2期生の鏡晋吾氏と新戸亜依氏が登壇。地域コミュニティづくりによる地域共創事業を専門とする企業の代表を務める鏡氏は本課程修了をきっかけに始めた東京都・渋谷の魅力を発信する活動としてローカルメディア「渋谷新聞」の立ち上げなどを報告した。

また、新戸氏は自身が事業責任者を務める訪日観光客の地域観光誘致施策「かつぎて」を紹介した。

同じく2期生の板垣信行氏が登壇。官民連携による地域の課題解決、まちのブランディングに携わってきた板垣氏。住民の幸福度(満足度)を上げ、転出を防止すること、持続可能なまちづくりを推進し、人口減少を緩やかにすることが自身のテーマ。板垣氏は人口減少が激しい自治体には特徴があると指摘。デジタル庁の地域幸福度(Well-Being)指標を用いて客観指標より主観指標が低くなっていると人口が減少すると指摘。実態に即して住民の満足度を上げていく活動が必要だとして、地域の事例として5年間の施策を具体的に明記した「総合戦略」などを紹介した。

続いて「スポーツ」を切り口に課題解決に取り組む5期生の佐藤夏美氏が登壇。佐藤氏は福島県浪江町へのスポーツ選手の地域移住を促進、自治体・企業と連携しつつ、様々な活動を展開。スポーツ選手のセカンドキャリアの課題と被災地が抱える課題を掛け合わせながら、スポーツの力を最大限に生かした地域の開発に取り組んでいる。

3期生の向笠高弘氏は6次産業化を通して、多様な人たちが交じり合い、誰もが生涯活躍するコミュニティづくりを目指している「ケアフィットファーム」(山梨県甲州市)の活動を発表した。向笠氏は荒廃したブドウ畑の開墾から苗植えに挑戦、その過程で、耕作放棄地の拡大、空き家など地域課題に気づく。一方、山梨県にはアジアを誇るワインの産地など地域資源・魅力もある。そこで、関係人口創出を目指して葡萄とワインづくりを通した様々なワーケーションプログラムなどを報告した。

最後に3期生の藤沢尚慶氏※2が地域での不登校支援をテーマに本課程修了後の活動を報告した。不登校の子どもをもつ父親のコミュニティや「川崎不登校・ひきこもり親の会ネットワーク」などでの活動を紹介。約50名の修了生が参加した同窓会。ピッチセッション終了後は懇親会を開催し、更なる親睦を深めていった。

懇親会では教員・修了生が親睦を深めた。

※1 「先端教育」26年5月号
https://www.sentankyo.jp/articles/2e777911-47c7-4497-83c9-ed5b121c7b83
※2 「先端教育」25年9月号
https://www.sentankyo.jp/articles/9034eb04-09e6-4170-93cd-216f0a595b54