コラム・教育の未来構想③ ~ウェルビーイングを高める教育とは?~

近頃、ウェルビーイング(Well-being)という言葉をよく耳にするようになった。ウェルビーイングは心理学でいうところの幸福を測るための構成概念であり、身体的・精神的・そして社会的に完全に良好ですべてが満たされた状態のことをいう。

SDGs(持続可能な開発目標)の17の目標の中にも「Good Health and Well-Being」という目標があり、ウェルビーイングは日本のみならず世界的にも重視されている概念である。最近になって日本においても様々な企業や自治体などでウェルビーイングを導入した働き方改革等が盛んに行われており、教育機関においてもウェルビーイングの構成要素を組み込んだ教育カリキュラムの開発や教師トレーニング等が実験的に行われている。 

本稿では、ウェルビーイングについて解説し、いくつかの関連研究等を紹介する。 

ウェルビーイング(Well-being)とは

ウェルビーイング(Well-being)とは、幸福感や満足感があり、それほど大きな悩みもなく、身体的、精神的に健康で、生活の質も高い状態のことと定義されている。心理学の分野において幸福理論とWell-being理論というものがあるが、Well-being理論では、ウェルビーイングとは構成概念であり、幸せではないとされている。ウェルビーイングでは、「ポジティブ感情」や「エンゲージメント」、「意味・意義」、「ポジティブな関係性」、「達成感」等の構成要素を測定し、各要素を増大するによって持続的幸福度を増大させることが目標となる。

ウェルビーイングの向上に関する取組み紹介

ウェルビーイングの向上による教育効果を測る場合、まずウェルビーイングの構成要素を可視化し、現状を把握する必要がある。

株式会社ハピネスプラネットでは、組織の幸福状態を測る「Happiness Planet」というアプリケーションを開発しており、働き手が感じる幸福度を客観的な指標である数値として測定することができる。 

研究分野では、Alejandro Adlerらによる「Teaching Well-Being increases Academic Performance」の論文の中で、ウェルビーイングと学業成績には因果関係があり、幸福度が上昇することによって学業成績も上昇することが証明されている。また、ペンシルバニア大学のMartin E. P. Seligmanが提唱するポジティブ心理学では、ウェルビーイングを科学として理論的に測るための5つの要素「PERMA」という指標を開発している。 

これらのウェルビーイング教育の有効性に関する研究については、また次回お話しする。 

コラム・教育の未来構想① ~マイクロクレデンシャルの普及~ 

コラム・教育の未来構想② ~ナノディグリーへの取組み~

22.10.6news1

画像はイメージ。Photo by sewcream /Adobe Stock 

★画像名 河合孝尚
事業構想大学院大学教授。静岡大学大学院理工学研究科博士課程修了。情報学博士。2022年4月1日より事業構想大学院大学教授として着任。経済産業省安全保障貿易自主管理促進アドバイザーや他大学の講師等を兼任。これまでに大学におけるリスクマネジメント等に関する実務を多数行ってきた。また教育研究活動として、Well-being教育や、研究公正教育等の教育システムに関する研究を行っている。主な研究分野は、教育情報学、研究インテグリティ、リスクマネジメントなど。