経産省、「伊藤レポート3.0(SX版伊藤レポート)」を取りまとめ

経済産業省では、昨年5月に「サステナブルな企業価値創造のための長期経営・長期投資に資する対話研究会(SX研究会)」を立ち上げ、サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)の具体化に向けた検討を進めるとともに、同年11月に立ち上げた「価値協創ガイダンスの改訂に向けたワーキング・グループ」において、SX実現のためのフレームワークとしての価値協創ガイダンスの改訂に向けた検討を深めてきた。研究会の報告書として「伊藤レポート3.0(SX版伊藤レポート)」を取りまとめるとともに、「価値協創ガイダンス2.0」を策定した。

背景として、日本企業の資本効率性や長期成長に向けた投資は伸び悩んでおり、伊藤レポート(2014年公表)以来の課題である「稼ぐ力」や長期的な企業価値の向上は、今や待ったなしの状況にある。一方、国際的な動向に目を転じると、サステナビリティ課題を巡る状況は企業活動の持続性に大きな影響を及ぼしており、サステナビリティへの対応は、長期的かつ持続的な価値創造に向けた企業経営の根幹をなす要素となりつつある。

こうした中、経済産業省では、昨年5月にSX研究会を立ち上げ、SXの実現に向けて、企業や投資家等に求められる取組を具体化させるため、8回にわたり議論を行った。SXとは、社会のサステナビリティと企業のサステナビリティを「同期化」させていくこと、及びそのために必要な経営・事業変革(トランスフォーメーション)を意味する。

SX研究会の議論を踏まえつつ、SXの実現に向けた経営の強化、効果的な情報開示や建設的な対話を行うためのフレームワークとして価値協創ガイダンスを改訂することを目指し、昨年11月に立ち上げた「価値協創ガイダンスの改訂に向けたワーキング・グループ」で2回の会合を催し、議論の成果として、「伊藤レポート3.0(SX版伊藤レポート)」・「価値協創ガイダンス」を策定した。

伊藤レポート3.0の主なポイントは以下のとおり。

(1)日本企業の長期成長に向けた投資の伸び悩みや、国際的にサステナビリティへの対応が長期経営の根幹をなす要素となりつつある状況は、日本の企業・投資家をはじめとするインベストメントチェーン全体にとって試練であるとともに、チャンス。
(2)SXの実践こそ、これからの日本企業の「稼ぎ方」の本流となっていく。
(3)企業が投資家等との建設的な対話を通じ、従来の企業活動の延長線上にはない非連続的な変革を加速することが重要。
(4)SXの実現のための具体的な取組としては、以下の3点が挙げられる。

ⅰ. 社会のサステナビリティを踏まえた目指す姿の明確化
ⅱ. 目指す姿に基づく長期価値創造を実現するための戦略の構築
ⅲ. 長期価値創造を実効的に推進するためのKPI・ガバナンスと、実質的な対話を通じた更なる磨き上げ

(5)バリューチェーン全体(中堅・中小企業やスタートアップを含む)やインベストメントチェーン上の多様なプレイヤー(運用機関・アセットオーナー、証券アナリスト、ESG評価機関など)も含め、日本全体でSXを効果的に推進していくことが必要。

「伊藤レポート3.0(SX版伊藤レポート)」の詳細については、下記を参照。
https://www.meti.go.jp/press/2022/08/20220831004/20220831004-a.pdf

22.9.1news2

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