AI時代に必要なのは信頼のコミュニケーション
社会構想大学院大学「地域プロジェクトマネージャー養成課程」の第7期修了生・鹿取広幸氏は、大手塾の校長や教育コンサルタントの経験を活かして講演活動を行っている。その経験と地域活性化を結び付けた鹿取氏に、本課程で得た学びや現在の活動などを聞いた。
ふるさと応援大使補佐を契機に
芽生えた地域活性化への想い
鹿取 広幸
教育コンサルタント
今金町ふるさと応援大使補佐
京都嵐山生まれ、京都育ち。学生時代はタレント、塾講師を経験。大学卒業後は、京都の大手進学塾に就職、校長職等を歴任。長年の教育経験の中で培ってきた教育ノウハウなどにより、「新しい時代の親子関係や人材育成、伝統継承は、信頼あるコミュニケーションの構築である」という考えのもと講演活動を行っている。社会構想大学院大学「地域プロジェクトマネージャー養成課程」第7期修了生。
社会構想大学院大学の「地域プロジェクトマネージャー養成課程」(以下「本課程」)では、地域活性へ向けた産官学連携プロジェクトを計画・運営する際に、様々な利害関係者の「架け橋」となり、プロジェクト全体をマネジメントする「ブリッジ人材」を育成する。本課程では、多用な専門家が、通常学習する機会の少ない「行政視点」を多く取り入れながら、地方自治体の考え方、地域活性化や産官学連携の手法・事例などについて、リアルかつ現在進行形の知識・スキルを提供。また、地方自治体に政策提言を行う機会も設けている。
第7期修了生の鹿取広幸氏は京都生まれの京都育ち。約25年間、関西大手塾の講師・校長を務めた後、民間企業で教育コンサルタントとして研修や講演活動などに携わってきた。
転機は2024年に訪れた。鹿取氏のパートナーで、仏像彫刻師の鹿取千恵氏が郷里である北海道今金町で「ふるさと応援大使」に任命され、鹿取氏は全国でも珍しい「補佐」に就いた。「大阪関西万博2025」では鹿取千恵氏と共に、北海道今金町のPR活動のためイベントに登壇した。
北海道渡島半島北部に位置し、男爵イモのブランド「今金男しゃく」で知られる今金町。少子高齢化が進む今金町のために何かできないかと考えていた折、インターネット上で「地域プロジェクトマネージャー」という言葉に出会った。鹿取氏は「長年に渡って教育業界に携わってきた経験と地域活性化を結びつけたいと考えていたところ、本課程を知り、受講を申し込みました」と話す。
和歌山県紀美野町へ
「里山探究学習」などを提案
本課程では、地域活性化に向けた様々なアプローチに関して、各分野の第一線で活躍する教授陣から直接話を聞けたことが大きな価値だったと鹿取氏は振り返る。また、本課程で得た学びについて鹿取氏が強調する点は実践の場だと指摘する。政策提言では、和歌山県北部にある紀美野町を選択した。
「自治体へ足を運び、地域の住民や職員の方と対話しながら地域活性化に向けた政策を練り上げるフィールドワークや、首長への政策提言といった貴重な経験が大きな自信に繋がりました」
政策提言では、紀美野町独自の教育として、自ら考え、手を動かし、自然とともに学ぶ「里山探究学習」をはじめ、紀美野町の「みさと天文台」と連携し、天文学や宇宙工学を学ぶ「宇宙教育」や、地元職人によるものづくり体験・地域プロジェク型学習といった「地域連携教育」など、知識だけでなく「生きる力」を育む教育プログラムを提案した。
こうした経験を通じて「修了後は、国会議員や自治体の首長・議員、担当者にも自分の意見を臆せず伝えられるようになったことが最大の収穫」と鹿取氏は力を込める。地元京都では、教育関連の政策について自治体の議員に意見を伝えているという。
信頼のコミュニケーションを育む
傾聴・質問・承認の3つのスキル
本課程修了後は、長年の教育コンサルタントとしての経験を活かして「新しい時代の親子関係や人材育成、伝統継承は、信頼あるコミュニケーションの構築である」という考えのもと講演活動を行っている。
講演をする鹿取氏の様子。
今金町のPRのため「ふるさと応援大使」の鹿取千恵氏と「大阪関西万博2025」に登壇した。
今年9月には北海道今金町で「地方創生は『教育』から始まる~次世代に繋ぐ、“信頼”のコミュニケーションとは~」をテーマに講演を行った。鹿取氏は教育機関の教員に向けて、子どもたちのやる気を引き出したり、関わり方を学ぶ「教育コーチング」の研修・講演にも携わってきた。その軸となるのが「信頼のコミュニケーション」だ。
「時代と共に価値観なども多様化していますが、結局、世代を超えて大切なのは『人と人との信頼関係を築くこと』です。これはAIにはできないことです。AIが注目される時代だからこそ、最も重要なのは人と人との対話やコミュニケーションだと考えています」
特に信頼を育む対話術として「傾聴・質問・承認」の3つのスキルが重要だと鹿取氏は力を込める。この力が地域における明るいまちづくりの土台にもなる。
本課程の受講を考える人へのメッセージを尋ねると「第一線で活躍する講師陣と対話し、実際に自治体へ提言できる経験は何物にも代えがたいものです。地域活性化に関心がある人はもちろん、これから議員を目指す人にもぜひ受けてほしいですね」とエールを送った。