Society5.0時代に向けた大学教育改革を提言

日本経済団体連合会が、報告書「Society5.0に向けた大学教育と採用に関する考え方」を公開した。産業界と大学が2019年に実施した「採用と大学教育の未来に関する産学協議会」における議論をまとめたもので、「大学教育」「産学連携」「採用・インターンシップ」の3つの観点から、Society5.0時代に活躍できる人材をいかにして育成すべきかを提言している。

大学教育においては、今後は最終的な専門分野が文系・理系であることを問わず、リテラシー、論理的思考力、規範的判断力、課題発見・解決力、未来社会の構想・設計力などが求められ、これらの能力修得にはリベラルアーツ教育が重要とした。また、これらの能力を育成するためには初等中等教育から多様な考えや能力を伸ばす方向に転換し、失敗を恐れず挑戦する習慣を身に付けさせる必要があるとした。

高校でも文系・理系の垣根をなくし、文系を選択しても理数の基礎知識が身に付けられる、理系を選択しても人文・社会科学を学べる体制にする必要があるとしている。さらに、社会人リカレント教育を拡充し、継続的な学び直しを評価していくことが必要とした。

Society 5.0に求められる人材の能力と大学教育

Society 5.0に求められる人材の能力と大学教育

出典:採用と大学教育の未来に関する産学協議会「中間とりまとめと共同提言」(2019年4月22日)

産学連携については、研究開発分野だけでなく、価値創造や未来の人材育成を推進するために、包括連携協定などによる「組織対組織」の中長期的な連携を行い、大学と企業間の人材交流(共同研究、PBL型教育、リカレント教育)を拡大すべきとした。

また企業には、社員の大学などにおける学び直しを奨励するため、修士課程・博士課程に進学するインセンティブとなる評価体系や、人事制度等の整備を検討すべきとしている。

採用・インターンシップについては、企業には大学の学修・学事日程を尊重した採用選考活動やインターンシップの実施を求め、就業体験が十分確保できない1日限りのプログラムには「ワンデーインターンシップ」の名称を使用すべきではないと指摘している。複数大学・複数企業や業界団体によるキャリア教育の実施や、大学院生を対象とした新たなジョブ型採用直結インターンシップの試行も提言している。

大学院進学率の国際比較の図。修士の人数は米・英・韓などと比べ3分の1程度

大学院進学率の国際比較の図。修士の人数は米・英・韓などと比べ3分の1程度

出典:文部科学省科学技術・学術政策研究所「科学技術指標 2019」(2019年8月)

大学教育改革に関する政府への要望としては、AI・数理統計・データサイエンス人材育成に向けた措置や、大学と連携した教育プログラムへの企業の資金拠出促進に向けた税制措置、大学設置基準の見直し、大学の多様な財源確保のための制度・法的基盤の整備、の4つを掲げた。