GXの学びと実践で脱炭素社会を担う人材を育成

立命館大学はGX人材の育成に向け、「GXプロフェッショナル+Rプログラム」を開講した。科学と経営の知を融合し、脱炭素社会の実現を担う人材を育てる新たな試みだ。プログラムを牽引する島田幸司教授と依田祐一教授に、構想の背景や各コースの特徴、今後の展望を聞いた。

バイオ炭研究で豊富な実績がある
立命館大学がGX人材の育成へ

島田 幸司

島田 幸司

立命館大学 経済学部 教授
2003年3月まで環境省(環境庁)にて地球環境行政等に従事。同年3月、京都大学工学研究科環境工学専攻博士後期課程修了。博士(工学)。同年4月から現職。主な研究テーマはエネルギー消費行動分析、再生可能エネルギーの取引メカニズム研究。環境省温室効果ガス排出削減等指針検討委員会座長、京都市環境審議会地球温暖化対策推進委員会委員長、神戸市環境保全審議会会長等を歴任。主な著書に『SDGs時代の食・環境問題入門』(共著、昭和堂)がある。

 

依田 祐一

依田 祐一

立命館大学 経営学部 教授
NTT、立命館大学経営学部准教授(2015)を経て、現職(2021-)。博士(経営学)(神戸大学)、日本マーケティング学会理事(2017-)、スタンフォード大学 客員研究員(2018-2019)、ニュルティンゲン・ガイスリンゲン経済環境大学 客員教授(2023)、ストラスブール大学 客員教授(2025)。立命館大学日本バイオ炭研究センター副センター長、バイオ炭の炭素貯留によるカーボンマイナス・エコシステムの形成による社会実装を推進。農水省、農研機構、国際農研、JST、自治体の各々から公的資金の受託研究を経験。

地球温暖化対策と脱炭素化の実現は、もはや一部の専門家や環境団体の課題ではなく、企業経営に直結する必須テーマとなった。規制強化や国際的な合意形成の動きが進む中、企業は単なるコンプライアンス対応を超えて、持続可能な成長戦略を描くことが求められている。

こうした状況に応えるべく、立命館大学は文部科学省「リカレント教育エコシステム構築支援事業」に採択された「GXプロフェッショナル+Rプログラム」を2025年9月に開講した。本プログラムは、多彩なリカレント教育プログラムを提供してきた立命館アカデミックセンター(ACR)を基盤に設計され、研究と教育を結び付けながらGX人材の育成を目指していく。

立命館大学はバイオ炭研究で豊富な実績を重ねながら、日本バイオ炭研究センターの設置や日本バイオ炭コンソーシアムの立ち上げを通じて、産官学連携による社会実装を推進してきた。今回の採択は、そうした戦略性や実行性も評価されたものだ。

本プログラムを率いるのは、環境政策や環境経済学を専門とする島田幸司教授と、経営学とデジタル戦略の専門家であり、バイオ炭の社会実装にも注力する依田祐一教授が中心となり、科学と経営の両面からGXを体系的に学ぶプログラムを構築した。

開講の背景について「18歳人口が減少する中、大学の使命として社会人への学び直しの場の提供が重視されています。本学としても、散在していたGX関連リソースを集結させる狙いがありました」と島田教授は語る。

依田教授も「立命館大学には、地球温暖化を長年の研究課題としてきた教員が多く在籍します。講師陣には、日本が世界で初めて公的に認証したJ-クレジット制度でバイオ炭の方法論策定に携わった研究者なども加わり、GXを規制対応ではなく、価値創造の源泉として捉え、科学的知見を基盤に企業の未来戦略につながる学びを提供します」と強調する。

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