新たな教員研修の在り方とは?教師の学びのプラットフォーム構築へ

教育の質向上に向けた教員研修の在り方に注目が集まる中、教職員支援機構は、教員研修情報を集約・提供するプラットフォーム化に取り組んでいる。昨年4月に同機構理事長に着任した荒瀬克己氏に、話を伺った。

(独)教職員支援機構は、教職員に対する総合的支援を行う全国拠点として、研修の実施や調査研究を通じて、教職員の資質・能力の向上に寄与することを目的とした法人である。本年7月には教員免許更新制が発展的に解消され、教員ごとの研修の記録作成と校長による指導助言の義務付けが来年4月からスタートする。今後の研修の在り方が注目される中、機構では教員研修情報を集約・提供するプラットフォーム化に取り組んでいる。機構の理事長である荒瀬克己氏は昨年4月から着任し、研修そのものについても様々な改革を進めている。

「堀川高校の奇跡」

荒瀬 克己

荒瀬 克己

独立行政法人教職員支援機構 理事長
1998年4月から2012年3月まで、京都市立堀川高等学校教頭・校長として在任中、課題探究型の学習を採り入れるとともに、国公立大学合格者を飛躍的に増やしたことで「堀川の奇跡」と注目される。その後、京都市教育委員会教育企画監、大谷大学教授、関西国際大学学長補佐、兵庫教育大学理事等を経て、2021年4月より現職。第11期中央教育審議会副会長、初等中等教育分科会長等を務める。

植草 茂樹

公認会計士(事業構想修士、東京工業大学企画本部特任専門員、東京農業大学客員教授、(独)国立青少年教育振興支援機構監事)。大手監査法人教育セクター支援室にて会計監査等を経験後、独立。内閣府「PEAKS会計・資産活用WG」主査、文部科学省「国立大学法人会計基準等検討会議委員」など歴任。

江端 新吾

東京工業大学総括理事・副学長特別補佐/ 企画本部戦略的経営室教授、内閣府科学技術・イノベーション推進事務局上席科学技術政策フェロー。文部科学省科学技術・学術審議会「研究開発基盤部会」の委員等を歴任。

荒瀬理事長は、1998年4月からの京都市立堀川高校の教頭・校長の在職時、独自のアイデアで「課題探究型の学習」を導入し、「探究科」で学んだ卒業生の国公立大学への現役合格者数を前年の6人から106人に増やし「堀川の奇跡」として注目された。

今でこそ、「総合的な探究の時間」として高等学校の教育課程内に位置づけられているが、同高校の探究科の導入時は様々な批判的な意見も多かったという。しかし、課題探究型の学習は、大学入試とも矛盾せず、「生徒のためになると教職員が信じて取り組んできた(荒瀬氏)」ことが大きかった。探究科では「全ては君の『知りたい』から始まる」というメッセージを打ち出し、生徒は本人の意思として自分の進路を決めていくのであり、学校を「学び方を身につける」学びの場と位置付けた。一方、教師は自分自身の学びを極め、生徒にも教師の頑張っている姿を見せ、学校全体が学び舎となっていくことを狙ったのである。その結果として、「堀川の奇跡」が生まれた。

荒瀬氏が機構に着任して課題として感じたのは、これまでの機構の提供していた研修が「講義」中心であったことである。そこでまず取り組んだことは、…

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