家庭・地域による格差は縮小するのか 「やりっ放し教育行政」の改革を

データによる実態把握と政策・実践の効果検証を軽視してきた今までの「やりっ放し教育行政」では、「生まれ」による教育成果の格差が縮小することは期待できない。日本の教育と社会を変えうる実効性のある改革について考察する。

今までの教育行政では
教育格差は縮小しそうにない

松岡 亮二

松岡 亮二

早稲田大学 准教授
ハワイ州立大学マノア校教育学部博士課程修了。博士(教育学)。早稲田大学リサーチアワード・国際研究発信力(二〇二〇年度)など多数受賞。一般書に単著『教育格差(ちくま新書)』、編著『教育論の新常識 (中公新書ラクレ)』、共編著『現場で使える教育社会学:教職のための「教育格差」入門』(ミネルヴァ書房)がある。

教育格差とは、子供本人に変更できない初期条件である「生まれ」と学力や最終学歴といった教育の結果に関連がある状態を意味する。様々な「生まれ」があるが、拙著『教育格差:階層・地域・学歴』(ちくま新書)では、出身家庭の社会経済的地位(Socioeconomic status, 以下SES)に着目し、全国調査データを用いて、戦後日本社会に育ったすべての世代において教育格差が存在することを示した。また、信頼できる複数のデータの分析を通じて、未就学から高校までの各教育段階における教育格差の実態を描いた。さらに国際比較データによって、日本の教育格差が先進諸国の中で平均的に過ぎない点を明らかにした。日本は「凡庸な」教育格差社会なのである。今後、大きな政策介入がないのであれば、少なくとも(多少の変動を伴いつつも)これまでと同程度の格差が維持されていくと考えられる。

(※全文:2482文字 画像:あり)

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