既存のフレームに囚われない教師が、ICT利活用教育推進のカギに

GIGAスクール構想と ICT利活用教育の推進に、教育現場はどう取り組むべきか。東京都小金井市立前原小学校前校長として、全国に先駆けて1人1台の情報端末を用いた授業実践に取り組んできた松田孝氏(合同会社 MAZDA Incredible Lab 代表)に聞いた。

従来指導法からの、パラダイム転換を

──Society5.0の実現に向けた ICT利活用教育について、どう捉えていますか。

松田孝

松田孝

合同会社 MAZDA Incredible Lab 代表
東京学芸大学教育学部卒、上越教育大学大学院修士課程修了。東京都公立小学校教諭、指導主事、主任指導主事(狛江市教育委員会指導室長)を経て、2016年4月から小金井市立前原小学校に着任。全国に先駆け1人1台の情報端末をど真ん中においた授業実践と、新しい学びのトリガーとしてのプログラミング授業を積極的に推進。2018年4月からは早稲田大学大学院教育学研究科博士後期課程にも在籍し、ICT を積極的に活用した学級集団づくりの新しいアプローチとその有効性をめぐって研究活動を推進。2019年3月に退職し、同年4月に合同会社 MAZDA Incredible Lab を設立。Society5.0の新しい「学び」の実現を目指すシンクタンクの代表として奔走中。総務省地域情報化アドバイザー、小金井市教育 CIO 補佐官。著書に『学校を変えた最強のプログラミング教育』(くもん出版)など。

私が小金井市立前原小学校の校長に着任したのは2016年。前任校(多摩市立愛和小学校)での ICT 導入経験を活かして、市の教育委員会に対しては総務省の「『次世代学校 ICT環境』の整備に向けた実証」に参画することを提案し、Wi-Fi環境の整備や ICT機器の導入などに着手しました。この ICT環境整備と並行して校内では、3年生から6年生の11クラスを対象に、年間20時間のプログラミング授業を実践する試みも始めました。

前原小にいた3年間で、私が最もエネルギーを注いだのは1人1台の ICT環境づくりだったと言っても過言ではありません。それが GIGAスクール構想によって、高速通信ネットワークとともに全ての小中学校に整備されるわけですから、これほど素晴らしいことはないと思います。

ただし、重要なのは1人1台が実現した後に、それをどう活用していくかです。ICT利活用の大前提として、まずは教師一人ひとりが Society5.0という時代認識を持つことが求められます。

Society5.0とは、これまでのフィジカル空間(現実空間)とコンピューターが作り出すサイバー空間(仮想空間)が高度に融合した社会とされています。子どもたちはそうした全く新しい社会を生きていくのだと認識できれば、昭和・平成が作り上げたアナログをベースにした教科教育による…

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