学習者用デジタル教科書が実現する1人1台端末時代の個別最適化学習[AD]
学習者用デジタル教科書は、紙の教科書では不可能な様々な機能を有し、高い学習効果が望めるだけでなく、学習履歴データの活用よる個別最適化された学習の実現も期待される。1人1台端末時代の学習者用デジタル教科書の可能性を、東京書籍の長谷部直人氏が解説する。
デジタル教科書の活用で、授業の可能性を拡大
長谷部直人 東京書籍
教育文化局 教育文化総轄本部 本部長
GIGA スクール構想の実現に向けて1人1台端末環境の整備が加速するなか、デジタル教科書の導入がいよいよ本格化する。
そもそもデジタル教科書は「学習者用」と「指導者用」に大別できる。前者は児童生徒が自身の端末で使用するもの、後者は教師が大型提示装置に掲示して指導に用いるものを指す。電子黒板の普及とともに、指導者用デジタル教科書は現場での導入が進み、授業で活用される場面が増えてきた。
一方、学習者用デジタル教科書は、2018年5月の学校教育法改正を受けて、2019年4月からようやく紙の教科書の一部をデジタル教科書に代えて使用できるようになった。2020年3月時点で、学習者用デジタル教科書の公立学校での普及率は8.2%となっている(令和元年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査)。
今後はその効果・影響を検証しながら、次の小学校の教科書改訂時期に当たる2024年度の本格導入を見据え、文部科学省の有識者会議で検討を行う。
それでは、学習者用デジタル教科書を導入した場合、どのようなメリットが得られるのだろうか。
大手教科書出版社の東京書籍の長谷部直人氏は「紙の教科書ではできなかった文字の拡大・縮小や書き込み、色の変更、読み上げ(機械音声)などができるようになり、教育活動の一層の充実が図れます。また、デジタル教材と一体的に使用することで、動画・アニメーション、録音音声の再生などが可能になり、文字だけでは伝わりにくい学習の理解を促す効果もあります」と話す。
たとえば、理科ならパノラマ VR を使ったバーチャル野外観察、算数なら図形を回転・分解・変形させながら見ることもできるため、授業の可能性は無限に広がりそうだ。
ICT 環境やニーズに合わせ、共有 PC や BYOD にも対応
デジタル教科書は教科書発行者の任意発行であるが、東京書籍ではすべての教科・種目において学習者用デジタル教科書を発行するとともに、児童生徒が個々にデジタルコンテンツを活用する場面が多く見込まれる教科については、学習者用デジタル教材も発行。指導者用デジタル教科書(教材)とあわせ、幅広いラインナップで教育の ICT 化を支援している。
多様な教育コンテンツ・サービスに対応するために、学習者用デジタル教科書には、シンプルな画面にさまざまな機能が標準搭載された、Lentrance社の学習用 ICT プラットフォーム「Lentrance Reader」を導入。拡大・縮小、書き込み、外部リンク機能はもちろん、複数の教科書・教材を1つの本棚で一括管理できるため、振り返りや教科横断的な学習をスムーズに行うことが可能だ。
また、文部科学省では学習指導要領にコードを割り振り、教科書の内容と教材をダイレクトに連携させることを検討している。「すでに東京書籍では、画面を2分割し、左右に教科書と教材を並べて表示できる上に、リンクボタンをクリックするだけで、本棚に登録されている他の教科書・教材を開くことも可能です」と長谷部氏。
コード化が実現すれば、学習指導要領をキーに、他社のデジタル教科書・教材ツールをリンクできるため、教科書・教材の一体的利用が一層スムーズになるという。
学校の ICT 環境や運用形態に合わせ、利用方式をアプリ(Windows、iOS)に加え、ウェブブラウザにも対応している点に注目したい。
「いずれの利用方式でも、同じ機能と同じユーザーインターフェース、そして同じ操作感で利用できるようデザインが統一されています。クラウドでの利用の場合は、アカウント情報から同じ画面や設定、書き込み等のデータを再現できるので、BYOD(私物端末の持ち込み)の利用にも対応可能です。PC、タブレット、スマホと複数の端末から、いつでもどこでもデジタル教科書・教材を用いて学習することができます」
学習ログの分析を元に、個別最適化された学びを実現
東京書籍のデジタル教科書は、「どのページをいつ読んだか」「どの部分を注視したか」「何を書き込んだか」といった学習履歴データの取得が可能だ。
こうした学習ログ機能を活用し、同社は1人1台環境が整備されている公立小学校で、東北大学堀田龍也研究室との共同研究を実施してきた。算数と社会の2教科でプロトタイプの学習者用デジタル教科書のアプリ版を端末にインストールし、2017年から約2年にわたって取得した操作ログから、利用の多かったページやポップアップで拡大した図などを特定し、利用された機能とコンテンツの分析を行った。
長谷部氏は「今後、クラウド配信版の学習者用デジタル教科書が広く普及していけば、操作ログ数やデータが増えていくことが予想されます。より詳細な分析を行うには、人手を介さずに情報の集約や分析を自動化・可視化するシステムが必要になります」と述べ、システムを開発する Lentrance社と連携し、家庭での学習状況や学習習慣のデータを取得し、その分析に基づいて教師や保護者にフィードバックを行うシステムを開発中だと報告した。
今後は1人1台環境における最適なコンテンツを一層充実させるとともに、学習ログの活用によって個別最適化された学びの実現を目指していく。
【お問い合わせ】
東京書籍株式会社
総務部広報チーム
Mail:pr@tokyo-shoseki.co.jp
この記事に関するお問い合わせは以下のフォームより送信してください。