『人新世の教育論:「借り」の学習と共(コモン)の創造』

従来の考え方のままでは様々に絡み合う地球規模の問題に向き合うことはできない。教育もまた、関係と生成を軸とした新しい地平へと向かうべき時が来ている。

1.「人新世」とは何か?

『人新世の教育論:「借り」の学習と共(コモン)の創造』

『人新世の教育論:
「借り」の学習と共(コモン)の創造』


楠見友輔著/慶應義塾大学出版会/
2026年4月/四六判/216頁/
2500円+税

楠見 友輔

楠見 友輔

信州大学教育学部准教授
東京大学大学院教育学研究科博士課程修了。博士(教育学)。学びの共同体スーパーバイザーとして多数の小学校・中学校・特別支援学校の学校改革に携わる。知的障害のある子どもを含むインクルーシブ教育の実現に向けて、理論構築と実践研究を行っている。主著に、『子どもの学習を問い直す』(東京大学出版会、2022年)、『アンラーニング質的研究』(新曜社、2024年)、『人新世の教育論』(慶應義塾大学出版会、2026年)。

今年の夏も、記録的な暑さになることが予測されています。こうした気象を私たちは「異常気象」と呼ぶことがあります。

しかし、猛暑が毎年訪れるようになっているならば、それはもはや「異常」ではなく、「通常」というべきです。それでも私たちが「異常」と呼びたくなるのは、いつか元の過ごしやすい気候に戻ることを期待しているからかもしれません。しかし、従来の安定した気候が戻ってくることはもはやないでしょう。フランスの哲学者ブリュノ・ラトゥールは、現在の状況を「新気候体制」と呼びました。それは、地球がすでに以前とは異なる状態へと移ってしまったことを示す言葉です。

本書のタイトルに掲げた「人新世」は、人間の活動が地球環境を決定的に変えるほど大きくなった時代を指します。ただしそれは、人間の強大な力を称賛する言葉ではありません。むしろ、現在の地球と人間の関係への警鐘であり、人間が地球の外側に立って自然を管理できるという考え方が成り立たなくなった時代を表しています。

人新世という認識が求めるのは、地球上の様々な物や生き物が複雑に絡み合う世界の中で、私たち自身もその一部として考えることです。本書は、こうした人新世の世界観のもとで、地球と共に生き続けるための教育のあり方を考える試みです。

(※全文:2374文字 画像:あり)

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