ウィズコロナ時代の小中教育のあり方を提言

日本経団連が、「Society5.0に向けて求められる初等中等教育改革 第一次提言~with コロナ時代の教育に求められる取組み~」を公表した。Society 5.0で求められる能力と教育の方向性を整理し、with コロナ時代に必要な新しい教育様式を確立するための初等中等教育改革について取りまとめている。

with コロナ時代の初等中等教育に求められる取組み

出典:「Society5.0に向けて求められる初等中等教育改革 第一次提言~with コロナ時代の教育に求められる取組み~」日本経済団体連合会

提言のポイントは大きく4つあり、一つ目は新型コロナの第2波に備え、オンライン授業と家庭でのオンライン学習が可能な環境を実現するために「全国でリモート教育が実施可能な環境の緊急整備」を求めた。二つ目は「改訂学習指導要領が目指す教育の実現」で、「修得主義」をより重視した教育や、オンライン学習と学校での対面形式の学習とのハイブリッドな学習環境の必要性を強調した。

三つ目は、「ICT を活用した新しい教育様式に対応できる教員の養成」として、ICT 活用力向上に向けた教員養成課程の見直しや働き方改革、外部人材活用などを求めた。四つ目は「9月入学に向けた考え方」で、教育水準の低下等を懸念して「慎重に検討すべき」としている。

特に「全国でリモート教育が実施可能な環境の緊急整備」の項目では、日本の ICT 環境の現状を危機感を持って説明。OECD「国際教育指導環境調査(TALIS)2018年報告書」によると、学校での課題や学級活動に ICT を活用している教員の割合は、日本は TALIS 参加48カ国中最低レベルの水準を示している。

課題や学級での活動に ICT を活用させている教員の割合

出典:「Society5.0に向けて求められる初等中等教育改革 第一次提言~with コロナ時代の教育に求められる取組み~」日本経済団体連合会

2015年調査よりコンピュータを使ったテストに移行した OECD「生徒の学習到達度調査 2018年調査」において日本の「読解力」の順位が急落したが、この原因も、児童生徒が学習の場面で ICT を活用する機会が少なく、コンピュータ画面上での長文読解に不慣れであったためとの指摘があるという。

また新型コロナの感染拡大に伴う学校の臨時休校を受け、政府は4月に「GIGA スクール構想」の前倒し実施など緊急措置を講じたが、臨時休校中に双方向のオンライン教育を実施した学校は全体の5%で、ほとんどは紙ベースの教材を活用した家庭学習を課すに留まっていた。