実務と教育の往還に力を注ぎ、培ってきた知見を社会に還元

損保ジャパンの役員等を経て独立し、経営コンサルタントとして活動する尾﨑眞二氏。社会構想大学院大学の実務家教員養成課程で学びを深め、日本女子大学で教壇に立つなど、実務と教育の往還を通じて、自身の知見・経験を社会へと還元している。

大手企業の役員を経て独立、
養成課程で学びを深める

尾﨑 眞二

尾﨑 眞二

XOホールディングス株式会社 代表取締役
日本女子大学 リカレント教育課程 担当講師
環境経営大学院大学(設置構想中) ボードメンバー
社会構想大学院大学 実務家教員養成課程 修了生
一般財団法人TN中村記念財団 評議員
昭和株式会社 顧問 他
1982年、北九州市立大学法学部卒業後、安田火災海上保険株式会社(現在の損害保険ジャパン株式会社)に入社。企画部門、B2B営業等を経験し執行役員、常務執行役員、顧問を歴任。退任後、B2B専門会社であるオートビジネスサービス株式会社代表取締役社長、TPR株式会社社外監査役を務めた。2020年に経営コンサルタント会社であるDXOホールディングス株式会社を起業し、代表取締役に就任。ほかに上場企業等の社外取締役(東部ネットワーク株式会社)・社外監査役(片倉工業株式会社、株式会社トータル保険サービス)を務める。

尾﨑眞二氏は現在、自身が立ち上げた経営コンサルティング会社・DXOホールディングスの代表として活動するとともに、日本女子大学リカレント教育課程の担当講師を務めている。尾﨑氏は1982年に大学を卒業した後、安田火災海上保険(現・損害保険ジャパン)に入社。企画部門やB2B営業などを経験し、執行役員、常務執行役員、顧問を歴任した。退任後はB2B専門会社であるオートビジネスサービスの代表取締役社長や、自動車部品のTPR社外監査役も務めた。

そして2020年、DXOホールディングスを起業。他にも複数の上場企業の社外取締役などを務めていたほか、「サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX、企業の持続的成長)」をテーマに中堅中小企業の経営層との共創に力を注いでいる。

豊富なキャリアを歩む中で、尾﨑氏は自身の知見・経験を他者に伝える力の重要性を感じていたという。

「損保ジャパン時代は、ある意味で閉じた世界の中で生きていました。役員から別会社の経営者や社外役員に就任して議論の場も多く経験しましたが、他者への伝達能力を高めなければと感じました。また、中堅中小企業の経営者との共創でも、必要な内容を適時適切に伝えることの重要性を痛感していました」

そのような中で出会ったのが、社会構想大学院大学の「実務家教員養成課程」だ。同課程は企業人等が自身の実務経験を活かし、大学で教育研究に携わるための知識や技能を身につけるプログラムだ。尾﨑氏は自身の実践知を体系化し、伝える力を高めたいと受講を決意。2022年10月から半年間、養成課程で学びを深め、翌年3月に修了した。

養成課程で実習授業を経験し、
大学教員のキャリアに踏み出す

尾﨑氏は実務家教員養成課程で模擬授業を経験し、大きな学びを得た。

尾﨑氏は養成課程について、主に3つの学びがあったと振り返る。第1に、幅広い年齢層で多様な職業の受講者との交流を通じ、多くの刺激と気づきを得た。第2に、不足していると感じていた伝える力について、体系的に学ぶことができた。第3に、大学教員を志す上で必要となる、さまざまなことで具体的なアドバイスを得られた。

「先生方は非常に熱心で、シラバス(授業計画)作成のノウハウから学習者に対して効果的に伝えるための方法論まで、詳細に説明してくださいました」

尾﨑氏は養成課程の授業でSXに関するシラバス作成に取り組んだが、「そこで得た知見は他にも応用できると感じました」と語る。シラバス作成の方法論は、コンサルティング先の企業における事業計画や研修カリキュラム等の作成でも役立っているという。

養成課程では、社会構想大学院大学の連携校であった日本女子大学での実習授業も実施された。尾﨑氏は日本女子大学の教壇に立ち、ウェルビーイングと健康経営をテーマに授業を行ったが、これが自身のキャリアを拓くきっかけとなった。日本女子大学が2023年10月に開講する「次世代リーダーを目指す女性のためのDX人材育成コース」の担当講師として、声がかかったのだ。

もともとスキルの向上や体系化を目的に養成課程を受講した尾﨑氏だったが、以前から自身の知見・経験を社会に還元し貢献したいという想いがあり、大学教員のキャリアへと踏み出すことを決めた。

新たな活躍の場を広げ、
実務と教育の往還に力を注ぐ

尾﨑氏は現在、日本女子大学の同コースにおいて、「DXシステム概論」と「DX推進事例研究」の授業を担当。実務家としての強みを活かした学びを提供している。また、自身の人的ネットワークを活かしてDX先進企業の事例を収集し、実際に企業訪問も行って知見を深め、授業での事例紹介に活用している。「自分の得意分野を教育内容に落とし込み、受講者に具体的な手法を伝えています」と尾﨑氏は語る。

授業では一方通行で伝えるだけでなく、必ず個人ワークとグループワークを取り入れる。また、受講者の理解を深めるため、次の授業の冒頭で前回の復習を行うなど工夫を凝らしている。こうした授業運営の方法は、いずれも養成課程で学んだことだ。

日本女子大学の同コースはオンラインで行われ、学んでいるのは幅広い年齢層の女性たちだ。企業や自治体から多様な受講者が参加し、役職も管理職から専門職までさまざまだ。授業を通して尾﨑氏は、受講者の向学心の高さに感銘を受けている。

尾﨑氏は自身のキャリアを振り返り、「所属企業で仕事を頑張ることは大切ですが、それだけに終わらず、新たなキャリアに挑戦することも重要だと感じます」と語る。

以前は忙しさから、書籍執筆の依頼を断ったこともあるという尾﨑氏だが、養成課程を受講した後は、不意の打診も前向きに検討するようになった。その結果、大学教員の仕事をはじめ、さまざまな機会を得られ、「諦めずにやり続ければ、誰かが見ていてチャンスをもらえることもある」と感じている。

2年ほど前、尾﨑氏に新たなチャンスが舞い込んだ。社会構想大学院大学のシンポジウムにパネラーとして招かれた際、環境経営大学院大学(設置構想中)の設立準備を進める関係者から協力を依頼され、同大学院認可の場合、教員への就任を予定している。

「環境経営大学院大学は、環境経営に特化したビジネススクールで、私は『組織行動とリーダーシップ』分野の授業を担当する予定です」

尾﨑氏は今後もDXOホールディングスの事業とともに、大学教員としての活動にも力を注ぎ、実務と教育の往還を深めていきたいと考えている。

「実務家教員として価値を提供するには、常に最新の知識を吸収し、現場での実践を続けることが不可欠です。65歳の今、培ってきた知見を次世代に伝えながら、社会に貢献し続けたいと考えています」