研究者の知見を活かし、大学教員に 自分なりのキャリア構築を目指す

食品冷凍技術の研究者として、キャリアを重ねてきた中澤奈穂氏。その高度な知見を活かし、社会構想大学院大学の実務家教員養成課程を経て、現在は大学での教育活動にも従事している。教えることの難しさに直面しながらも、試行錯誤を続けて、自分なりのキャリア構築を目指している。

研究者としてキャリアを重ね、
自身の知見を社会に還元

中澤 奈穂

中澤 奈穂

一般社団法人 食品冷凍技術推進機構 研究員
帝京科学大学 生命環境学部生命科学科 非常勤講師
社会構想大学院大学 実務家教員養成課程 修了生
1993年東京農工大学卒業。海洋科学博士(東京海洋大学)。大洋漁業株式会社(現マルハニチロ株式会社)に入社。加工食品の研究開発業務に従事。水産大学校、東京海洋大学にて、水産物の鮮度・品質、冷凍保管、凍結・解凍に関する研究に携わる。現在、一般社団法人食品冷凍技術推進機構 研究員。2023年9月、社会構想大学院大学 実務家教員養成課程を修了。2023年度、2025年度 帝京科学大学 生命環境学部生命科学科 非常勤講師。

中澤奈穂氏は、食品冷凍技術推進機構の現役研究員だ。同機構は東京海洋大学を拠点とする研究機関であり、食品の冷凍技術に関する試験や研究開発を行っている。

中澤氏は「水産物の冷凍条件が品質に及ぼす影響」などを研究。例えば、魚を冷凍する際の温度や時間、保管方法によって、解凍後の品質がどう変わるかを科学的に解明し、実用化に結びつける研究に従事してきた。その研究成果は、消費者への安全で美味しい水産物の提供に直結している。中澤氏は2020年3月、博士号を取得した。

中澤氏は2023年4月~9月、社会構想大学院大学の実務家教員養成課程を受講した。同課程は、企業人等が大学教員になるための知識や技能を学ぶ教育プログラムだ。高度に複雑化した現代社会では、アカデミアの知見だけでは解決できない様々な問題が生じている。その一方で、産業界もまた、学術的な知見を取り入れる必要に迫られている。こうした中で、産業界と学術界を行き来し、自身の知見・経験を大学等で発揮する実務家教員が求められている。

中澤氏は養成課程を受講した理由について、「今後のキャリアを考えた時に、培ってきた経験を活かし、自分の研究成果を人に伝えることで、社会に貢献できるのではないかと思いました」と振り返る。

養成課程を受講した中澤氏は、大学教員になるのは想像以上に大変だと痛感したという。

「自分の研究成果を、ただ伝えるだけでは教えたことになりません。学習者に理解してもらい、大事なことに気づいてもらうためには、どのような授業を実践すればいいのか、思考の転換が必要で簡単ではありませんでした」

中澤氏の研究は非常に専門的で、特化した領域を深く追求する。研究者としてはそこが強みだが、学生に教えるには専門外の人にも理解しやすい形で伝えなければならない。養成課程ではシラバスの作り方、授業の進め方、アクティブラーニングの技法など、大学教育を担うための多様な知見を学んだ。

養成課程には、模擬授業を実践するプログラムもある。中澤氏は事前に授業の構成や内容を準備して模擬授業に臨んだが、実際に教壇に立ってみて初めて気づいたことは多かった。

「自分が前提としていた専門知識が、聴き手にとっては初めての内容ばかりで、初学者の視点に立って説明することの難しさを改めて痛感しました」

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