大学発スタートアップの真の成長に向けて 明確な方針と人材育成の必要性

北岡 侑子
日本ベンチャーキャピタル株式会社 シニアパートナー
名古屋大学 学術研究・産学官連携推進本部 客員教授
大阪大学 共創機構 招へい教授
科学技術振興機構 スタートアップ・エコシステム共創委員会 委員
文部科学省 国立大学法人評価委員会 官民イノベーションプログラム部会 臨時委員
日本において、スタートアップを取り巻く環境は、私が2001年にベンチャーキャピタル(VC)業界に入った当初と比べると、着実に進展しています。現在も全国の大学で、大学発の技術を効率的に事業化し続けるための『スタートアップ・エコシステム』の形成が進んでいます。
しかし依然として課題もあると感じます。1つ目は大学等で「何年後に何社のスタートアップを創出する」などの数値目標を定めて活動されていますが、その達成が目的化し、仕組みの運用が柔軟性に欠ける側面がある点です。2つ目は都市と地方の差です。研究レベルの高い大学や、事業化を支える大企業、金融機関、人材は大都市に集中しています。3つ目は情報の差です。起業に関心を持つ大学教員が、足もとの地域で行われているスタートアップ支援の取組みを知らないこともあります。4つ目はスタートアップが成長する道筋の先が狭くなりそうなことです。資本市場において、上場後5年で時価総額100億円未満の企業は上場廃止といった基準が設けられようとしていますが、これでは将来重要な産業になり得る大学発などの技術系スタートアップが、成長フェーズに入る前に退場を迫られてしまう恐れがあります。またその基準を意識して、証券会社はスタートアップの上場を控えるでしょうし、未上場のスタートアップに成長資金を提供するVCも、スタートアップに投資ができなくなくなってしまいます。
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