協働する探究のデザイン 答えのない授業を作る方法などあるのだろうか?

探究する学びをデザインする前に、そもそも「なぜ私たちは学ぶのだろうか」を問う必要がある。この問いの探究には、「あなたは何者なのか?」が一つのきっかけになる。

「わたし」が揺らされる時代

藤原さと

藤原さと

一般社団法人こたえのない学校代表理事。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。コーネル大学大学院修士(公共政策学)。
日本政策金融公庫で中小企業・新規事業融資に従事後、ソニー(株)本社経営企画管理・戦略部門で海外企業との共同開発等のプロジェクトに携わる。娘の公立保育園の父母会長になったことを機に「探究する学び」に出会い、2014年一般社団法人こたえのない学校を設立。学校教員・民間教育者・ビジネスパーソンなど教育変革をめざす多様な大人が探究する学び場「Learning Creator’s Lab」(LCL)を主宰。著書に『協働する探究のデザイン』(平凡社)『「探究」する学びをつくる』(平凡社)、『子どもの誇りに灯をともす』(英治出版/企画・解説)などがある。

私たちは何のために学んでいるのだろうか。今、極めて「わたし」というものを確実に捉えるのが難しい時代に突入している。世の中があまり変わらないように見えているとき、私たちの「自己」は比較的見えやすいような幻想を抱く。10年、20年後も今とほとんど変わらない生活をしているように思い、そのころの自分を想像して、着々と準備をする。江戸時代は、もし農家の家に生まれたら、種の選び方や苗の育て方、肥料の与え方、天気の見方などを親から学べばよかっただろう。武士の家に生まれたら基本的な読み書き算盤を学び、武道に精を出しただろう。

しかし、そのような公式がぜんぜん成り立たなくなってきたのが現代である。よく言われているように、今の世界はAIの発達による産業構造の変化、各地で深刻化する環境問題、戦争の勃発、難民受け入れをめぐる国内政治の分断などさまざまな問題が突きつけつけられている。こうした現代の状況の特性は、…

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