3つの探究モデルから考える 探究的な学習における生成AIの活用
生成AIは学習を自律的・創造的・対話的に再構成し得る。本稿は3つの探究モデルを通じて生成 AIの教育的レバレッジは何かを明らかにしつつ、生成AIを活用した生徒主体の新たな学習方法を提案したい。
1 はじめに

田中 博之
早稲田大学教職大学院 教授
1960年北九州市生まれ。大阪大学人間科学部卒業後、大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程在学中に大阪大学人間科学部助手となり、その後大阪教育大学教授を経て、2009年4月より現職。主著に、『教師のためのChatGPT活用術』学陽書房、他多数。研究活動として、学級力向上プロジェクトの研究、子どもの学習改善と学習評価の開発研究、子どもの自己成長力を伸ばす授業づくり、生成AIの教育利用の研究等、これからの学校に求められる新しい教育手法を作り出していく先進的な研究に従事。
近年ChatGPTに代表される生成AI(Generative AI)は、瞬時に言語・画像・音声等を創出する力を備え、学習者の「問いづくり→調査→思考→表現→評価・改善」という探究サイクルを質・量ともに拡張し得るテクノロジーとして脚光を浴びている。田中(2024)はこうした潮流を踏まえ、生成AIが学習を自律的・創造的・対話的に再構成し得ると論じ、〈仮説検証型〉〈創作表現型〉〈実践実習型〉という3つの探究モデルを提示した。
しかし日本の学校教育では、AIドリルのような個別最適化ツールは導入が進むものの、「生成AIを探究的な学習へ組み込む指針」が学年・教科横断で共有されているとは言いがたい。教師は①出力の信頼性や著作権保護、②プロンプト設計とガードレール、③評価方法の再設計という複数課題を抱え、教育委員会は体系的研修とICT環境整備を同時に迫られている。そこで本稿では、まず生成AI活用の教育的意義を概観し、次に3つの探究モデルに沿って具体的な授業場面を示しながら、生徒主体の学びをいかにデザインできるかを論じる。最後に、現場・行政・大学が共有すべきメッセージと今後の課題を整理する。
(※全文:2327文字 画像:あり)
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