実務家教員が磨くべき教育能力とは 教育の方法に唯一の正解なし

愛媛大学では新規採用の教員に対して、最初の3年間で合計100時間もの能力開発プログラムの受講を義務化している。同大学において教育の質向上に向けた各種活動に携わる中井俊樹教授に、実務家教員に求められる教育能力、FD の取組みについて話を聞いた。

プレゼンテーションとは異なり、説明だけで授業はできない

──実務家教員に求められる教育能力について、どのように見ていますか。

中井俊樹

中井俊樹

愛媛大学 教育・学生支援機構 教育企画室 教授
1970年生まれ。1992年東京大学教育学部卒業、1997年名古屋大学大学院国際開発研究科修士課程修了、1998年同大学院博士課程中途退学、1998年名古屋大学高等教育研究センター助手、2000年同センター講師、2003年同センター助教授、2007年同センター准教授を経て2015年より現職。愛媛大学の教育の質向上に関する各種活動に加え、教職員能力開発拠点の活動として他機関における研修や組織開発支援を担当。大学教育学会理事(2015~)、日本高等教育開発協会理事(2015~)、大学教育イノベーション日本代表(2019~)。

実務家から教員に転身される方々にまず知っていただきたいのは、自分たちが知っている、かつての大学とは教育のあり方が大きく変わっていることです。昔の大学教員は、自分の専門分野の知識を学生に伝えていれば授業が成立しました。しかし現在では、「PBL(問題解決型学習)形式で授業をしてほしい」「ルーブリック(学習到達度を示す評価基準を表で示したもの)を作成して評価してほしい」など、授業に対する要望は各段に増えています。

大学教育の担い手となるためには、さまざまな能力や技術が必要です。例えば、プレゼンテーションが上手な実務家の方は多数いますが、授業とプレゼンテーションは異なります。基本、プレゼンテーションでは専門的な内容を説明しますが、教育の場合、何かを説明するだけでは不十分だからです。

授業をするうえで重要なのは…

(※全文:2418文字 画像:あり)

全文を読むには有料プランへのご登録が必要です。