今、なぜ実務家教員が必要なのか 職業教育分野の台頭、大学の役割に変化

近年、大学・大学院をはじめとする高等教育機関で「実務家教員」の登用が促進されている。その背景にある大学教育改革の軌跡や、実務家教員への期待と課題について、中教審大学分科会の臨時委員も務める、山梨県立大学理事長・学長の清水一彦氏に話を聞いた。

職業教育分野の台頭を背景に、実務家教員の登用が促進

──昨今、実務家教員が求められている背景や社会環境の変化について、どのように見ておられますか。

清水一彦

清水一彦

山梨県立大学 理事長・学長
一般財団法人 全国大学実務教育協会 代表理事・副会長
山梨県生まれ。1974年東京教育大学卒、1980年筑波大学大学院教育学研究科教育制度学博士課程満期退学、97年「日米の大学単位制度の比較史的研究」で同大学博士(教育学)。1983年清泉女学院短期大学専任講師、86年助教授、1988年筑波大学教育学系(大学研究センター)講師、91年助教授、99年教授となり、2009年筑波大学副学長・理事。2015年山梨県立大学理事長・学長に選任。文部科学省の中央教育審議会大学分科会で臨時委員を務める。

専門職大学や専門職短期大学が2019年に創設され、高等教育における実学が今まで以上に活性化する状況にあります。動物看護やファッション、リハビリテーションなどの分野で専門職大学がつくられ、プロフェッショナルの養成が進められています。専門職大学では教員の4割以上を実務家教員とすることが要件とされ、また、高等専門学校(高専)でも実務家教員の参画が促進されるなど、教育の現場でビジネス実務の経験を活かせる場は着実に広がっています。

歴史を紐解くと、そもそも大学の起源は職業教育であり、中世ヨーロッパの大学では神職、法律家、医師等の教育が主体でした。一方、戦後日本の大学では学術教育が中心とされてきました。学位は研究者のもの、ひいては大学教育全体が…

(※全文:2292文字 画像:あり)

全文を読むには有料プランへのご登録が必要です。